国内ゲームビジネスを巡る停滞感から、海外パブリッシャーと直接、受注開発を行うディベロッパーの例が、徐々に増加しています。この傾向は今後も増加することが見込まれます。
しかし、その際に大きな障壁となるのが、GDD(ゲームデザインドキュメント)とTDD(テクニカルデザインドキュメント)と呼ばれるドキュメントの作成です。前者はいわゆる「仕様書」、後者は「技術仕様書」と呼ばれ、α版と共に提出することが求められる例も少なくありません。文量も文字通り「電話帳」並が一般的で、英語で書くことが求められます。パブリッシャーによっては、ゲームが完成してもこれらのドキュメントが納品できなければ、開発費用が支払われないこともあります。
また、大作ゲームでは海外ディベロッパーへのタイトル発注や、部分発注といった例が増えています。受注開発でもマルチプラットフォームでの案件が一般的になっているため、ディベロッパー自らが海外に部分発注する例も少なくありません。こうした国際分業を円滑に進める上でも、英文によるGDD、TDD作成は欠かせません。しかし、これらのドキュメント作成は、国内の開発現場ではまだまだ一般的ではなく、GDD、TDDといった言葉を聞いたことがない開発者も多いのが現状です。
そこで本セッションでは、SIG-Glocalizationの世話人の一人でもあり、海外ディベロッパーと長く開発経験のあるセガの長谷川亮一氏が、架空のゲームタイトルを例に挙げて、一般的なGDD、TDDの書き方と、日本で言う企画書、仕様書との違いを解説いたします。ドキュメント作成で陥りやすい問題点や、その解決方法、さらにはドキュメントベースによる開発のあり方や、開発チームの意識改革の方法といった点についても補足します。
架空のゲームタイトルが例とはいえ、GDD、TDDといった実際の開発現場で使われているドキュメントが、CEDECで講演の遡上にのることは、過去に例がないと思います。また日本の開発現場を支える中小のディベロッパーにとって、GDD、TDDについて学ぶことは、海外市場を意識したゲーム開発を行う上で、大きな刺激になるはずです(もちろんパブリッシャーの内作チームやプロデューサーにとっても、です)。この講演を機会に、GDD、TDDという言葉が一般的な開発用語として浸透するような内容にしたいと思います。
参考URL
【CEDEC 2008】ゲーム開発会社が海外パブリッシャーから開発を受注するには?
http://www.inside-games.jp/article/2008/09/12/31160.html
講演者プロフィール
長谷川 亮一
1992年、株式会社セガ・エンタープライゼス(当時)に入社。家庭用ゲームのローカライズ業務を担当、関わったタイトルは30以上。
1998年、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント入社。「クラッシュ・バンディクー」「ラチェット&クランク」「Formula One」シリーズなどを担当。
2007年、株式会社セガ入社。ローカライズ業務全般を管理する。
2003年、2004年、2009年のGDCにてローカライズに関する講演を行う。また、2009年から立ち上がったIGDA日本のSIG_Glocalizeの世話人として、グローカライズSIGのパネルディスカッションにパネリストの1人として参加した。