※ 本講演は、CEDEC2020-2023 の講演『ゲームプログラマのための数学の歩き方』シリーズの続編ですが、内容につながりはありません。独立してご聴講していただけます。
近年のゲーム開発では、ゲームエンジン上のエディタやDCCツールなどにおいてノードグラフを目にする機会が増えました。こうしたノードグラフを扱うグラフ理論の中で、スペクトルグラフ理論と呼ばれるものをご存知でしょうか。グラフを"絵"として捉えると、それを用いた計算を行うことは困難です。そこで、グラフを数字のみの情報として表した行列と線形代数により解析する理論があります。これがスペクトルグラフ理論です。
本講演では、必要となる線形代数の知識を大まかに復習した後に、スペクトルグラフ理論について紹介します。その後、ノードグラフのレイアウトや画像セグメンテーション、メッシュパラメトリゼーションや変形といった応用に触れます。昨年度までの講演と同様に、技術の土台となる数学概念を独力で学ぶための参考にしていただければ幸いです。
講演者プロフィール
長谷川 勇
オープンソース開発、ソフトウェアプロダクト開発、エンタープライズシステム開発などの様々な開発を経てゲームプログラマに。株式会社スクウェア・エニックスでは、Luminous Studio、FINAL FANTASY XVの開発に参加し、VFX・UIを担当。現在は産学連携による共同研究の仕組み作りや研究開発部門のマネージメントに従事、2024年より現職。専門は言語処理系。ACM SIGGRAPH Asia 2018 Real Time Live! Chair、2021 Games Chair。共著『ゲームエンジニア養成読本』(Software Design plusシリーズ、技術評論社)。
《講演者からのメッセージ》
CEDEC2020から応募している本シリーズも5年目になりました。マンネリにならないようにしつつ、本来やりたかった高校数学と大学数学の壁を越える一助になれば幸いです。最近の反省として「数学の講義」にならないようにもしたいと思います。
前田 航希
九州大学 理学部 数学科 卒業
その後、九州大学大学院 数理学府に在籍
《講演者からのメッセージ》
グラフ理論(スペクトルグラフ理論)に興味のある方に、少しでも面白さを届けられるよう講演します。
数学に苦手意識がある方でも、”知りたい!”方へ伝わるものを目指します。
鍛冶 静雄
"役に立つ"数学の開拓を目指す,九州大学マス・フォア・インダストリ研究所(Institute of Mathematics for Industry)にて,柔らかい幾何学・トポロジーを背景に形状処理や機械学習などの研究に携わる.日本評論社・数学セミナーにて2020年4月号から2021年3月号まで「かたちを算する」を連載.
《講演者からのメッセージ》
ちょっと使ってみたくなる,そんな数学をお伝えできればと思います.
落合 啓之
CEDECでは 2013, 2014, 2021, 2022 に登壇しています。著書に、Ken Anjyo and Hiroyuki Ochiai: Mathematical Basics of Motion and Deformation in Computer Graphics, Morgan and Claypool Publishers, 2014, があります。これは SIGGRAPH のコースをもとにしたものです。1987年東京大学理学部数学科卒業、立教大学名古屋大学などを経て 2009年から現職。
《講演者からのメッセージ》
なぜそういう定義をするのか、という気持ちのようなものをお伝えして、正式な書物や論文を読んでいて感じる違和感を軽減できたらいいなと思います。