近年、ゲームタイトル開発の大規模化が進んでいます。
それに伴いアセットデータの増加、多言語への対応、並行バージョンの開発など、開発PCのストレージ要求は容量・性能の両面で逼迫する一方です。
この1つの対策として、各種エンジンやバージョン管理システムでは「仮想化」に注目し、この課題について改善しようとしています。
弊社でも同様に、Windows で使用可能な仮想ファイルシステムを利用し、バージョン管理ツールと連携するツールを作成しました。
これを使用して開発PCのストレージ課題を解消することを目指しています。
本講演では、「仮想化」がどのように役立つのか、「仮想化」を実現するための方法を説明します。
そして、開発したツールを『PSO2 ニュージェネシス』(以下『NGS』)の開発環境に対して適用し、仮想ファイルシステムを使うことで得られた効果を共有します。
また、ツールの開発や運用の際にはファイルシステムならではの問題に遭遇しました。
これらの問題について共有し、それぞれの解決策を共有します。
これから仮想ファイルシステムを利用して効率化を進めたいと考える人が少しでも増えれば幸いです。
講演者プロフィール
山田 英伸
2005年に株式会社セガにプログラマとして入社し、アーケード向け社内ライブラリ開発から、家庭用・モバイルを含むマルチプラットフォームミドルウェア開発に従事。現在は、社内向けツール開発やアプリ向けライブラリの開発、テスト自動化に関するものなど幅広く担当。最近の趣味は、近年のグラフィックスAPIを嗜むこと。
【登壇歴】
Unite Tokyo 2019 「大量のアセットも怖くない!~HTTP/2による高速な通信の実装例~」
CEDEC 2020 「技術同人作家になろう ~働き方改革時代におけるエンジニアのレベルアップの一例~」
CEDEC 2021 「ダウンロード時間を大幅減!~大量のアセットをさばく高速な実装と運用事例の共有~」
《講演者からのメッセージ》
近年、ゲームコンテンツの大規模化に伴い、アセットが占めるデータ量は開発環境のストレージ課題となりがちです。
理想的には、開発環境で使用するストレージには十分な大容量かつ高速なものを使用したいところですが、現実にはそれが難しい場合が多いでしょう。
この課題に対し、様々なところで仮想化というキーワードで改善を試みているところが多いようで、注目が集まっている分野です。
私たちは、仮想ファイルシステムを用いた事例をご紹介します。
普段は意識することの少ないファイルシステムのレイヤーからのアプローチで、開発環境のストレージ課題を改善していくのかについて、お伝えしたいと思います。
高橋 陸
2018年、株式会社セガに入社。以来、クライアントプログラマとしてファンタシースターシリーズの開発に携わる。『ファンタシースターオンライン2』ではアクションパートを担当。『PSO2 ニュージェネシス』ではCI/CD管理、デプロイ業務に従事。
《講演者からのメッセージ》
『PSO2 ニュージェネシス』では大量のアセットを管理しています。この開発事例を通じて、仮想ファイルシステムが大規模なプロジェクトに与える効果についてお話しします。
阿部 輝仁
アーケードコンテンツ開発部門のプログラマーとしてキャリアをスタート。海外スタジオへの出向・ハードウェア開発部門への異動などを経て、アーケードとコンシューマー、ランタイムライブラリ(デバイス系・グラフィックス系)、開発環境(ゲーム機向け OS 構築・DCC ツール制作)など活動領域にこだわらず様々なソフトウェア開発を経験。
《講演者からのメッセージ》
Projected File System は OS(Windows)の一部をハックするための手段のひとつです。Windows Driver Kit などは不要で、ユーザーランドのアプリケーション開発の知識だけで利用することができます。その機能を、今回は実用性のあるツールとして仕上げることができました。その成果を紹介できることがうれしく思います。