本セッションでは、プレイヤーの感情の動きをより把握しやすくするゲーム体験(UX)の分析手法を紹介します。作った、あるいは作ろうとしているUXに対する仮説を立て、その仮説に対応した感情の動きや、感情の動きを引き起こしたイベントをプロットして「プレイヤージャーニーマップ」を作っていきます。
たとえば、バトルにおける感情を「勝利への期待感」「敗北への不安感」「興奮」に分解して図式化することでバトル進行に伴う感情の盛り上がりを分析したり、「コワイ」感情を「恐怖」「不安」「興奮」に分解して図式化することでコワイ感情が起こる理由や性質をより深く考察したりできます。目指したいUXに対する開発メンバーそれぞれの暗黙的な感覚や考え方が明確になり、議論をより円滑に進めやすくなります。
具体的な事例として、既存のゲームについてプレイヤーの感情の動きを分析した社内有志によるワークショップの事例と、開発中のゲームにおいて、ゲーム内容を状況に応じて動的に変化させる「ゲームマスターAI」の検証にプレイヤージャーニーマップを活用した事例について説明します。
講演者プロフィール
里井 大輝
筑波大学大学院博士後期課程修了後、2017年にスクウェア・エニックス入社。各種ゲームAIの研究開発、および「KINGDOM HEARTS III」などのゲームソフトへの導入に従事。ゲームUXに関する有志の社内サークルを共同設立し、知見の共有や蓄積にも取り組む。博士(工学)。
主な講演歴
・「Changing the Game: Measuring and Influencing Player Emotions Through Meta AI」(GDC 2019)
・感情を揺さぶるメタAI ~ゲームへの実装方法とバランス調整への応用事例~(CEDEC 2019)
《講演者からのメッセージ》
本講演でご紹介する感情の分析や図式化は、そのままでも企画やプレイテストなどで幅広く活用できますし、ゲームの中でリアルタイムに計測することでさらに威力を発揮します!
本講演が面白いゲームデザインやゲームUXを実現する一助になれば嬉しいです。
安明 真哉
和歌山大学大学院博士前期課程修了後、2017年にスクウェア・エニックス入社。
主に家庭用ゲーム機向けのゲームデザイナーとして「FINAL FANTASY XVI」など複数プロジェクトに従事。
開発の傍らUXとゲームの関係性について興味を持ち、ゲームUXに関する有志の社内サークルを共同設立し、UX分野のゲームにおける可能性について模索・検討を行っている。
《講演者からのメッセージ》
普段、開発を進めていく中でメンバーと共通認識を作りながら進めることは、円滑な開発を行う上で重要ですが困難な道のりであると思います。
本講演が、開発時の認識の齟齬を埋める手助けになれば幸いです。