あらゆる文化は過去の遺産の積み重ねのうえに発展をつづけていくものですが、デジタルゲームもまた、そうした文化の一つです。その意味で過去のデジタルゲームの蓄積にアクセスできるということは、ゲームという産業、文化の発展にとって極めて重要な問題です。しかしながら、アクセスができない過去のゲームは日々増えています。企業、公的機関、コレクターなどを見渡しても過去のゲーム全体を統合的に保存できているといえる組織は、まだありません。ゲームの保存は、現状さまざまな課題を抱えており、その解決のためには様々なアクターが協力していく必要があります。
本セッションでは、デジタルゲームのアーカイブ事業に長年取り組んできた立命館大学の活動を通じて、国内外において保存がどこまですすんでいるのか、それをどのように活用できるのか、今後どういった展開が可能かといった情報を共有するとともに、企業のみなさんと今後の課題を議論できればと思います。
講演者プロフィール
井上明人
ゲーム研究者。現在、立命館大学講師。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了後、国際大学GLOCOM助教、関西大学特任准教授などを経て現職。ゲームという経験が何なのかを論じる『中心をもたない、現象としてのゲームについて』を連載中。また、2014年よりゲームのアーカイブやデータベースに関わるプロジェクトに関わっている。単著に『ゲーミフィケーション』(NHK出版,2012)。開発したゲームとしては、震災時にリリースした節電ゲーム『#denkimeter』、『ビジュアルノベル版 Wikipedia 地方病(日本住血吸虫症)』など。
《講演者からのメッセージ》
ゲームのデータベースや、アーカイブについては、さまざまな方が意欲的に取り組んでいます。しかし、ゲームが体系的に保存されていると言える状態にたどり着くためには、まだまだ超えなければいけないハードルがいくつもあります。ゲームを保存していくために、何が課題になっているのか、どのような力を合わせていけばいいのかについて議論をつくっていければと思います。
福田一史
博士(学術)、立命館大学先端総合学術研究科授業担当講師。専門は、メタデータ、図書館情報学とイノベーション、経営史、文化政策、ビデオゲームを主たる研究対象とする。
《講演者からのメッセージ》
メタデータの観点から、ビデオゲームを記述し分析するための方法について研究しています。
様々な専門家と議論し、ご意見を伺いたく思っています。お気軽にご参加ください。
尾鼻崇
日本デジタルゲーム学会事務局長。映像音楽研究者、キュレーター、音楽作家。日本学術振興会特別研究員、立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー、中部大学人文学部准教授を経て現在に至る。博士(学術)。著作・分担執筆に『映画音楽からゲームオーディオへ』、『デジタル・ヒューマニティーズ研究とWeb技術』、『文化情報学事典』など。
《講演者からのメッセージ》
ゲーム保存の試みは世界各国の様々な機関で進められていますが、私が課題としたいのは、適切な保存を行うと同時に、それらをどのように利活用していくのかという点です。そのためには多くの人々や組織が連携し、少しずつ知見や問題を共有していくことが不可欠です。今回の報告がそのための一つの機会となればと思っています。