新規キャラクターが恒常的にリリースされ,それらを用いてプレイヤーが対戦する形式の PvP ゲームを長期運用するに際して,キャラクターやそれらによって構成されるデッキアーキタイプのバランス設計は健全な対戦環境を維持する上で重要である.本講演では,『逆転オセロニア』における,『教師あり学習』『クラスタリング × バンディットアルゴリズム』ならびに『強化学習』の手法を併用した,キャラクター・デッキアーキタイプのバランス設計の支援機構およびゲーム運用への導入について紹介する.
講演者プロフィール
吉村 拓真
2013年4月にDeNAに入社し、複数のモバイルゲーム運営を経た後『逆転オセロニア』の運営チームに配属され、エンジニアおよびプロジェクト・マネージャーとして従事。
『逆転オセロニア』チーム在籍中に AI 活用案件に携わり、 AI の活用事例拡大に貢献すべく2019年4月よりゲーム × AI 案件を推進する横断組織へ。
本セッションのテーマにあたる案件においては、プロジェクト全体の推進およびサーバアーキテクチャの設計、教師あり学習モデルの学習・運用などを担当。
《講演者からのメッセージ》
PvP ゲームの運営において、対戦環境のコントロールと需要の創出は非常に重要です。
組み合わせの考慮漏れ、テストプレイの工数増大、属人化…ゲーム運営に関わったことのある方なら、いやそうでない方でも、一度は直面したことのある課題だと思います。
本セッションでは、新キャラクターの強度設計におけるこれらの課題に対する AI 技術を用いた取り組みとその結果についてお話しします。
ゲーム開発への AI 導入をお考えの皆様に少しでもお力添えできれば幸いです。
甲野 佑
博士 (情報学).2017年4月に中途入社.大学時代はヒトの意思決定傾向や脳における行動の習慣/階層化過程を組み合わせた強化学習モデルの基礎研究を行っていた.入社以来ゲームAI開発に携わっており,学習アーキテクチャ全体の設計と強化学習アルゴリズムの研究開発などに従事している.2018年4月より副業として東京電機大学にて機械学習・強化学習・プログラムを教える講師も務めている.
《講演者からのメッセージ》
近年のモバイルゲームでは従来考えられない頻度で新規要素の更新があります.あらかじめゲームバランスを精緻に設計できる更新のないゲームに比べて,その複雑性は容易に人間の認知限界を超えます.
そこに AI を導入することで限界の外にある様々な可能性を検証し,人間のプランニングをサポートすることができます.人間の創造性と AI の検算という,それぞれの良いところを組み合わせた人間 × AI の理想の協業に向けた第一歩としてご覧いただければ思います.