ゲーム開発は年々複雑化・大規模化しており,開発で直面する課題を自社のリソースのみで解決するのは難しくなってきています.
一方,金融機関や宇宙開発といったミッションクリティカルな大規模ソフトウェアシステム開発では,アカデミアの研究成果を適用し,開発の課題を解決することがあります.
こうしたアカデミアの最先端の技術をプロダクト開発に適用する方法としては,産学連携による共同研究が考えられます.しかし,産学連携をうまく運用するのは難しく,コストに見合う成果を得られないこともままあります.
本セッションでは,産学連携の始め方,円滑に進めるためのノウハウや最新動向を,学術界・産業界双方の立場から紹介します.加えて,今年4月に情報処理学会ソフトウェア工学研究会内に設立した産学連携促進WGの活動を紹介します.
講演者プロフィール
吉田 則裕
2009年 大阪大学 大学院情報科学研究科 博士後期課程修了。奈良先端科学技術大学院大学 助教等を経て、2014年より名古屋大学 准教授。博士(情報科学)。ソフトウェア工学を専門としており、中でもコードクローンの自動検出とリファクタリング支援に取り組んでいる。大学院生時代から企業との共同研究を行っており、開発現場の問題に対する学術的なアプローチの適用に取り組んでいる。情報処理学会 ソフトウェア工学研究会 産学連携促進ワーキンググループ 主査。ICSE、ESEM、APSECなど多くの主要国際会議の実践論文トラックにおいて、プログラム委員を担当。主なソフトウェア工学に関する実践論文として、共著「How Slim Will My System Be? Estimating Refactored Code Size by Merging Clones」(IEEE/ACM ICPC 2018)がある。
《講演者からのメッセージ》
ソフトウェア開発上の課題を大学と一緒に解決しませんか?多くの大学において、企業との共同研究など産学連携を推進していますが、開発者からあまり認知されていないように思います。このセッションでは、大学との共同研究などの産学連携を開始する方法や成功事例、起こりがちな問題と対策について紹介します。
小川 秀人
情報処理学会 ソフトウェア工学研究会 産学連携促進WG主査
情報処理学会 ソフトウェア工学研究会 幹事
AIプロダクト品質保証コンソーシアム 運営副委員長
博士(情報科学)
《講演者からのメッセージ》
産業界が抱えている課題を学問の視点で見直すと、簡単に解決できたり、逆に学問的にもとても面白い課題だったりします。異世界の勇者を召喚できるかもしれません。あるいは自らが異世界の勇者になれるかも。異世界との交信を楽しみましょう。
長谷川 勇
オープンソース開発、ソフトウェアプロダクト開発、エンタープライズシステム開発などの様々な開発を経てゲームプログラマに。株式会社スクウェア・エニックスに入社後は、Luminous Studio、FINAL FANTASY XVの開発に参加し、VFX・UIを担当。専門は言語処理系。ACM SIGGRAPH Asia 2018 Real Time Live! Chair、情報処理学会ソフトウェア工学研究会運営委員、情報処理教育委員。共著『ゲームエンジニア養成読本』(Software Design plusシリーズ、技術評論社)。
《講演者からのメッセージ》
最先端の技術を持つ大学や研究機関との共同研究は魅力的に聞こえるものの、実際にやろうとするとなかなかうまくいきません。本セッションでは大学・企業双方からの共同研究の知見を共有し、また情報交換することで、双方のメリットとなる共同研究の進め方を考えたいと思います。