まず、ゲームの遅延対策として過去の講演で紹介した事例や3つのアプローチを振り返ります。その上で、遅延時間を定量的な指標として扱えるように、表示解像度や音声サンプリングレートの規格と同様にヒトのタイミング知覚のメカニズムから紐解いていきます。特に、早さよりも重要な安定性について、旧ナムコ時代からアクション性の高いゲーム開発に活かされてきた知見を交えて、最適設計の勘所を解説します。さらに遅延の安定性重視の考え方を拡張して、映像クオリティを引き上げるフレームレートの最適化、超フレームレート変換について、事例も含めて示唆します。
講演者プロフィール
森口 明彦
1995年 旧ナムコ入社。現バンダイナムコ研究所在籍のエンジニア。
・CEDEC2010「AV機器遅延の実態」インタラクティブ・セッション
・CEDEC2012「AV機器とゲームの幸せな明日」講演
・CEDEC2014「AV機器だけが要因ではない?!今改めて見直したいゲームの遅延対策」講演
・CEDEC2015 - CEDEC AWARDSネットワーク部門「錯覚を利用したアプリケーション側遅延対策の提示」にて優秀賞受賞
1998年に参画したNTTマルチメディア共同実験にてB-ISDNのATM光回線を利用した横浜・東京・大阪間のレースゲーム実証実験の映像伝送周りを担当して光速を体感。横浜に設置したゲーム筐体から今で言うところのストリーミング配信によって、大阪・東京間の対戦を1フレーム期間未満の低遅延で実現し、設計の勘所を得る。
不具合対策ゆえに暗黙知となりがちなゲームの遅延問題と向き合い続けてもう20年?!の裏方です。
《講演者からのメッセージ》
セッションタイトルは、充てた「芯」の文字通り、遅延対策の「コア」(Core of Delay control technology)を語るにふさわしいセッションを目指しております。
我々の取り組みは心地良いゲーム体験を、ヒトのスペックと設計・実装コストの限界の中で、ちょうど良い落とし処を見付けることの繰り返しであり、旧ナムコのエンタメ開発のDNAにより培われたものでした。そこから得られた技術体系は直近の課題解決のみならず、高度化していくエンタメの在り方の中で頻出する新たな課題へのアプローチとして、多くの気付きを持ち帰っていただけるかと思います。
ゲーム開発現場の実践的なナレッジと、今回はそこから導かれた周辺産業にも活かせそうな応用を、時間の限り詰め込む予定ですので、手薄になる心配からの唐辛子レベルという設定です。聴講される皆さまのレベルは心配ご無用ですのでご安心ください。