人肌や食べ物などの半透明物体は様々な場面で登場します。しかし、半透明物体の重要な性質の一つである表面下散乱の計算には高いコストがかかるため、高速な描画は依然として大きな課題といえます。そこで、ダイクストラ法による主要な散乱光の高速な取得を用いた、半透明物体のリアルタイムレンダリング手法をご紹介します。最短経路を探索するアルゴリズムであるダイクストラ法を用いて、最も光が透過しやすい経路を探索します。そして、その経路を透過した光が描画結果に対して支配的であるという仮定の下、輝度の計算を行います。本セクションでは、表面下散乱光の近似的な扱いや、半透明物体のリアルタイムレンダリングについての解説を行います。
講演者プロフィール
小澤 禎裕
Eurographics 2016 Poster "Real-Time Rendering of Heterogeneous Translucent Materials with Dynamic Programming" 発表
《講演者からのメッセージ》
本手法は、簡単な実装で半透明物体のリアルタイムレンダリングを実現することができます。是非見に来てください。
久保 尋之
早稲田大学理工学術院助手(2011-2012),キヤノン株式会社(2012-2014)を経て現在に至る.スキンシェーダの研究成果をCEDEC2010, CEDEC2011, CEDEC2015にて講演.
《講演者からのメッセージ》
半透明物体内部で生じる表面下散乱現象に興味をもって研究しています.最近は実物体から表面下散乱のパラメータを計測することにも取り組んでいます.
森島 繁生
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。成蹊大学工学部教授を経て、早稲田大学先進理工学部応用物理学科教授、現在に至る。これまでトロント大学客員教授、ATR客員研究員、NICT客員研究員等を歴任。SIGGRAPH ASIA 2015 Workshop/Partner Event Chair, 画像電子学会2016年次大会長。研究室では、学生約30名がモデリング、レンダリング、シミュレーション、アニメーション、モーション制御、ノンフォトリアリスティックモデリング・レンダリング、画像処理、音楽情報処理、コンテンツ分析・合成等の研究に従事している。CEDECではここ数年連続してショートプレゼンおよびインタラクティブ発表を行っている。画像電子学会副会長、芸術科学会理事、日本顔学会理事。
《講演者からのメッセージ》
今回、早稲田大学先進理工学部森島研究室から3件の発表がございます。1つは口と音声の同期を3次元モデルや言語モデルを一切介さずに画像処理的に行う手法であり、オリジナルの映像ソースのみから、声優の喋る任意の言語への吹き替えが自動的に実現可能です。2つ目は、半透明物体の高速レンダリングで、動的計画法を導入することによって形状変形を伴う物体のアニメーションをリアルタイムで描画することが可能となりました。3つ目は、トランスルーセントシャドーマップの改良で、ボトルに入ったワインなど複数のマテリアルを含む半透明なオブジェクトをリアルタイムで描画できるようになりました。是非、ご興味のある方は会場にお越しください。