本企画では,予め人狼をプレイするAIを募集し、CEDECの場においてAIたちによる人狼大会を行い、実際にどのような戦いが行われるかをゲーム開発者にお見せしたいと思います。これによって、今後ゲーム産業がさまざまな場面で必要とする、キャラクターの自動対話生成、推論、他者の意図の理解と言った技術の実践例や,コミュニケーションゲームAIの理論的背景などをご紹介することができると考えており、それはゲーム産業にとっても、アカデミックにおいても、ともに技術を進歩させるきっかけになると考えております。なお,以下の人狼知能サイトで大会の情報、プログラム、サーバーの仕様など、論文などが閲覧できます。
http://www.aiwolf.org/
講演者プロフィール
鳥海不二夫
2004年,東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了,同年名古屋大学情報科学研究科助手,2007年同助教,2012年東京大学大学院工学系研究科准教授.エージェントベースシミュレーション,人工市場,ソーシャルメディア,ゲームにおけるAIなどの研究に従事.人狼知能プロジェクト代表.電子情報通信学会,日本社会情報学会会員.(博士(工学))
《講演者からのメッセージ》
人狼は騙し合いのゲームであるとよく言われますが,実際には信頼を勝ち取るゲームだと思います.
人工知能同士がどのように信頼関係を築いていくのか,あるいは人とAIは信頼関係を築けるのか.今後人狼知能が発達するにつれて,人とAIとがどのような関係にあるべきかが見えてくるのではないでしょうか.
その人狼知能による大会の第一回である今回は,単なるゲーム大会以上のものを皆様に感じていただけるようなセッションにできればと考えています.
三宅 陽一郎
京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。デジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。IGDA日本ゲームAI専門部会設立(世話人)、DiGRA JAPAN 理事、人工知能学会会員。共著『デジタルゲームの教科書』『デジタルゲームの技術』 翻訳監修『ゲームプログラマのためのC++』『C++のためのAPIデザイン』(SBCr)『はじめてのゲームAI』(WEB+DB PRESS Vol.68、技術評論社)。ゲームAIラウンドテーブル・オン・ツイッターを主催。最新の論文は『デジタルゲームにおける人工知能技術の応用の現在』(人工知能学会誌 Vol.30, Webで公開)。論文、講演資料はブログを通じて公開している。「y_miyakeのゲームAI千夜一夜」http://blogAI.igda.jp
《講演者からのメッセージ》
今年は3つの講演を行います。まず、最新のゲームAIの成果を取り込んだキャラクターAIの開発です。主に、RPGにおける意思決定における実装とツールをご紹介いたします。次に、2014年に行ったスクウェア・エニックス アカデミーについてのご報告です。これは、なかなか学ぶ環境のないゲーム産業におけるゲームAI技術を全五回に渡って講演・演習のカリキュラムを組んで実施したもので、その全体像をお知らせします。最後に「人狼知能」コンテストです。こちらは予選を行い「人狼」におけるAIを対戦するエキサイティングな大会です。是非、予選にも参加してください。「人狼知能」プロジェクト http://www.aiwolf.org/
稲葉通将
2008年 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科卒業.2012年 名古屋大学大学院情報科学研究科修了.博士(情報科学).同年広島市立大学大学院情報科学研究科助教.対話エージェント,対話処理に関する研究に従事.電子情報通信学会,情報処理学会,情報処理学会,言語処理学会各会員.
《講演者からのメッセージ》
人狼ゲームでは,相手の言ったことだけではなく,言っていないことについても理解・推定する必要があります.そのような技術の発展は,人狼知能を強くするだけではなく,人をおもいやることのできる,やさしい人工知能の実現につながるものだと考えています.
本セッションでは,エージェントは身体性を持たず,メッセージのやりとりのみで対戦を行います.そのような限定された条件下であっても,いかにエージェントが他のエージェントの意図を推理し,勝利していくかということについても注目していただければと思います.
大澤 博隆
2009 年慶應義塾大学大学院開放環境科学専攻博士課程修了. 2009 年慶應義塾大学訪問研究員及び米国マサチューセッツ工科大学 AgeLab 特別研究員.2010 年日本学術振興会特別研究員 PD に採択され,国立情報学研究所へ出向.同年から 2011年にかけて,JST さきがけ専任研究員に従事.2011 年より 2013年まで,慶應義塾大学理工学部情報工学科助教.2013 年より現在まで,筑波大学大学院システム情報工学研究科助教.ヒューマンエージェントインタラクション,人工知能の研究に従事.情報処理学会,日本ロボット学会,人工知能学会,IEEE,ACM 等会員.博士(工学).CEDEC2013インタラクティブセッション発表「バーチャルとリアルを行き来するエージェント・キャラクターの表現」,CEDEC2014パネルディスカッション「将棋の次は人狼か?」など
《講演者からのメッセージ》
他者の立場を推理するためには、他者の考えていることをモデル化する必要があります。それに加えて、他者を説得するため(≒他者に信頼されるため)には、他者が考えている自分自身もモデル化する必要があります。人狼はこうした複雑で社会的な駆け引きをプレイヤーに要求する「ある意味人間らしい」ゲームであり、将棋やチェスなどの完全情報ゲームとは少し違った種類の賢さが求められる課題です。
本セッションでは、この人狼を遊ぶための人工知能エージェントを各参加者が作り、もっとも人狼が強い人工知能を決めます。大会で生き残るためには様々な工夫が求められると思いますが、大会を通じて得られる知見は、コンピュータの中のキャラクター(エージェント)のやりとりにどうやって意図を持たせるか、キャラクターとユーザとのやりとりが魅力的に見えるためにどのような設計をすればいいのか、という広いテーマにつながっていくと信じています。
片上 大輔
2002年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了.博士(工学).同年東京工業大学大学院総合理工学研究科助手.2007年東京工業大学大学院総合理工学研究科助教.2006年英国ハートフォードシャー大学,スイスチューリヒ大学の客員研究員を兼任.2010年東京工芸大学工学部コンピュータ応用学科准教授.現在に至る.人工知能学会,日本知能情報ファジィ学会,IEEE,ACM各会員.HAIに関する研究に従事し,人狼知能および雰囲気工学に興味を持つ.
《講演者からのメッセージ》
人狼知能では,掲示板等で行われる高度に論理的な戦いに加えて,将来的には人間と同様に,しぐさや表情なども含めた,人間と対面で互角に戦える仕組みが必要です.本セッションでは,AIによる論理的な対戦による大会を行いますが,しぐさなどを含めた人狼知能研究の一部も紹介したいと思います.
松原 仁
1986年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.同年通産省工技院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所.2000年公立はこだて未来大学教授.人工知能,ゲーム情報学,エンタテインメントコンピューティング,観光情報学などに興味を持つ.著書に「将棋とコンピュータ」,「鉄腕アトムは実現できるか」,「先を読む頭脳」(共著),「コンピュータ将棋の進歩」(共著),「一人称研究のすすめ」(共著),「観光情報学入門」(共著)など.人工知能学会会長,情報処理学会理事,観光情報学会理事,コンピュータ囲碁フォーラム会長などを務める.
《講演者からのメッセージ》
ゲーム情報学はチェス,将棋,囲碁などもっぱら二人完全情報確定ゲームを対象としてきましたが,この種のゲームはかなりコンピュータが強くなってきたので,興味は多人数ゲーム,不完全情報ゲーム,不確定ゲームに移りつつあります.人狼とカーリングはとても面白い研究対象です.ぜひ多くの方々に興味を持っていただいて仲間として加わっていただくことを願っています.
篠田 孝祐
2004年 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士後期課程終了。博士(知識科学)、現在、電気通信大学 大学院情報システム学研究科 助教として、社会デザインのための自己組織化構造の研究に従事。マルチエージェントシステム、大規模社会シミュレーション、複雑系ネットワークに興味をもつ。人工知能学会、情報処理学会各会員。
《講演者からのメッセージ》
人狼知能大会への登録をよろしくお願いします。
児玉健
"心の栄養士"ともいわれる「おもちゃコンサルタント」の資格を持ち、大人がリアルに遊べる場を提供するため『ドイツゲームスペース@Shibuya』『人狼ルーム@Shibuya』『人狼ルーム@Akiba』を経営。
『人狼ゲーム@Shibuya』『大人狼村』『ドイツゲームナイト』などゲームイベントを数多く企画。
また、ゲームワークショップを組み込んだ企業研修企画や、児童館でのボードゲーム 講師など、娯楽・ビジネス・教育など各分野で活動中。
《講演者からのメッセージ》
人狼ゲームという、相互のコミュニケーションゲームを通して、色々な発見や楽しさを伝えることができればと思っております。遊びから学べるものを一緒に楽しく考えましょう!