コンピュータ・グラフィクスの世界では、常に新しい技術が研究・開発されており、ACM SIGGRAPGHやEUROGRAPHICSなどの学会では多くの論文が発表されている。
しかし、国内の多くのゲーム開発の現場では、英語で書かれた多くの技術論文の中から自分たちの業務に活かせる可能性のあるものを精査し、読みこなすことができる人的/時間的リソースは限られているのが現状である。
そして、余力のある一部の大手メーカでは技術を習得できても、業界の大多数を構成する小規模の開発スタジオまではそのような最新技術はなかなか浸透してゆかない。
本セッションでは、近年に開かれたコンピュータ・グラフィクスに関わる学会より、特にゲーム業界に有望と思われる(実用性や将来性を見込める)技術論文の紹介・解説を行う。
単なる技術紹介のみならず、背景となる知識や実装上の問題点・工夫などにも言及する。
今回は、特にリアルタイムグローバルイルミネーション(GI)手法の一つであるModular Radiance Transfer(MRT)を解説する。
近年、UnrealEngineのVoxel Cone TracingやCryEngineのLight Propagation Volumesといった
前計算不要のリアルタイムGI手法に注目が集まっているが、
MRTは前計算が必要かつ様々な制約を持つ代わりに高速で複数回の反射の扱いも容易であるという特徴を持つ。
ゲーム応用に際しては、MRTを用いる事で間接光を扱える事による大きな表現力の向上が期待できる。
本セッションでは、出来る限り平易に手法の要点を解説し、
応用の際のメリット・デメリットを的確に把握できるように注力する。
講演者プロフィール
安田 廉
1985年生まれ。東京大学大学院修士過程終了。大学院ではレンダリング/シミュレーション/GPGPUなど無節操に学び、一昨年シリコンスタジオに入社。優しい先輩方に囲まれて楽しい日々を送っております。
田村 尚希
1980年愛知県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。建築家を志し上京したものの、気づいてみればCG・ゲーム業界にどっぷり浸かっている今日この頃。2007年4月より(株)シリコンスタジオに在籍。トップレンダリストを目指して日々勉強の毎日。 ゴルフが趣味なのですが、ここ最近スコアが伸びず悩んでいます。