ゲームにおける人工知能技術の導入を、クロムハウンズ(Xbox360, ?SEGA Corporation / FromNetworks, Inc. / FromSoftware, Inc.)を題材に解説し、次世代のゲームAIが拓くゲームの可能性について展望します。技術的な面では、「ゴール指向型AIによるプランニング」と「ナビゲーションメッシュ上のA*アルゴリズムによるパス検索」による自律型AIの構築、さらに、「チームAIと自律的AIの対立による自由度の高い人工知能」の実現について説明し、開発工程の面では、パターンランゲージを用いたゲームにおける人工知能開発のワークフローの実現について解説します。企画、設計、技術に渡って、ゲームにおける人工知能開発の技術と知見を紹介することで、これからの人工知能開発を考える参考と契機として頂けるような講演にしたいと考えております。
資料映像(CEDECチャンネルへのリンク)
1. 【CEDEC2006】ゴール指向プランニング (「クロムハウンズAI」ムービー1)
2. 【CEDEC2006】リアルタイム・ゴール指向プランニング(1) (「クロムハウンズAI」ムービー2)
3. 【CEDEC2006】リアルタイム・ゴール指向プランニング(2) (「クロムハウンズAI」ムービー3)
4. 【CEDEC2006】パス検索システム(「クロムハウンズAI」ムービー4)
5. 【CEDEC2006】ナビゲーション・メッシュ(「クロムハウンズAI」ムービー5)
6. 【CEDEC2006】意思決定システム「複数の戦略ゴールに評価値をつけて選択する」(「クロムハウンズAI」ムービー6)
7. 【CEDEC2006】チームAIシステム (「クロムハウンズAI」ムービー7)
8. 【CEDEC2006】自律型AIチーム対戦デモ~序盤~ (「クロムハウンズAI」ムービー8)
9. 【CEDEC2006】自律型AIチーム対戦デモ~中盤~ (「クロムハウンズAI」ムービー9)
10.【CEDEC2006】自律型AIチーム対戦デモ~終盤~ (「クロムハウンズAI」ムービー10)
講演者プロフィール
三宅 陽一郎
1975年生まれ。京都大学で数学を専攻、大阪大学で物理学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。2004年、株式会社フロム・ソフトウエア入社。ゲームにおける本格的な人工知能技術の応用を目指す。2005年、クロムハウンズ(Xbox360, SEGA Corporation / FromNetworks, Inc. / FromSoftware, Inc.)の製作に、AIの設計として参加。 受講者へのPR・メッセージ はじめまして。クロムハウンズは、プレイヤーがハウンズと呼ばれるロボット(20m)を構築し、 最大6人のチームを組んで、広大なマップで戦うゲームです。プレイヤー同士で戦う他に、 COMのチームとも戦えます。
僕は、ここで、「AIが状況から自分で考えて行動する」、 自律的なAIを構築して、プレイヤーの相手をさせようと考え、開発チームと一緒に実現しました。 人間と同じ条件で15分ものチーム戦を行うAIを作るという試みは、 挑戦的、かつ、エキサイティングな課題で、ときには、迷い、ときには、歓声を上げて喜ぶ日々の連続でした。 同時に、企画、設計、プログラマー、グラフィッカー、デバッガー、たくさんの開発者の地道な作業の積み重ねがあって、初めて実現したシステムでもありました。
僕は、この講演で、そんなAIを作る、楽しさや興奮を伝えることが出来たらよいと思っております。 現在、日本のゲーム業界では、いろいろな都合上、技術的な情報の公開があまり行われていません。欧米では、そういった技術交流が盛んであり、そういった成果は、数多くの文献に結実し、 お互いを刺激しながらゲーム技術を発展させています。僕自身もそういった文献、教科書から多くの刺激を受けました。日本のゲームにおける技術が、それに遅れを取らないためには、 我々も技術を公開の場で発表し、討論する必要があると考えます。 今回の講演をその契機の一つとしたいと思っております。