The 禅 ~ユーザの発汗を利用した坐禅バイオフィードバックシステム

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日時:
2010年08月31日(火)〜2010年09月02日(木)
形式: ポスター発表
受講スキル:
ゲームシナリオ,ユーザテストなどに関わる業務経験.
受講者が得られるであろう知見:
ゲームにおける,バイオフィードバックシステムの有効的な利用や, そのゲームを体験するユーザの 印象や感想など,通常のゲームでは確認できないユーザの内省に関する知見が得られる.
セッションの内容

『The 禅』は,禅の基本的な修業法である「坐禅」に着目し,禅寺や道場以外では体験しにくい坐禅を,さまざまな場所で行え,初心者でも簡単に体験できるシステムを提案することを目的として制作した.具体的には,ユーザの精神性発汗から心の乱れを検知し,バイオフィードバックを用いて,直感的に理解しやすい情報として呈示し,坐禅がうまく行われているかどうかを示す仕組みとした.

『The 禅』のシステムについて具体的に説明する.『The 禅』は,センサから取得されたユーザの皮膚表面抵抗(SCR:Skin Conductance Response)の値を解析し,ユーザの心の乱れを判定する.そして,その判定結果を反映させた環境音をユーザに装着したヘッドフォンで提示する.システムは,一定時間内でのSCR値の平均値を確認し,その値が高い場合にユーザの「心の乱れ」があると判断し,低い場合に「心の乱れ」がないと判断した.
かつて禅僧が修行していたとされる山の中では,虫の声や小鳥の囀り,川のせせらぎ,風の音など,さまざまな音が存在していたと考えられる.このような雑念環境を参考とし,システムの初期状態では,それらの音を同時に呈示する.ユーザはそのような雑念環境下で坐禅を行い,坐禅を行っている間「心の乱れ」が無いと判断された場合,まず虫の声が消え,次に小鳥の囀りの雑念環境音が消滅する.もし,「心の乱れ」があると判断された場合では,それらの音は消えず,雑念環境音は保持される.また,一度消滅した音も,「心の乱れ」があると判断された場合に再生される仕組みとした.ユーザが,落ち着いた状態を保ち続けることが出来た場合,全ての雑念環境音が小さくなり,最終的には全て消滅するよう設定した.
雑念環境音は,自然音,環境音だけでなく,日常生活に存在するノイズ音,立体音響,音声などのエンタテインメント系の音など,ユーザが払拭したいと考える環境をいくつか用意することで,よりエンタテインメント性を高め,体験しやすくなるよう工夫を行った.ユーザテストの結果では,「『The 禅』は修行として活用できる」という意見のほか,「ゲーム性が高い」,「面白い」などのコメントが得られた.
ポスターセッションでは,『The禅』の体験や,雑念環境音の試供,SCR値の測定,ユーザテストに関する知見等,『The 禅』開発に関わる技術や諸問題について,詳細な説明を行う.


講演資料

  • C10_P0281.pdf

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講演者プロフィール

棟方 渚

棟方 渚
所属 : 北海道大学大学院
役職 : 情報科学研究科複合情報学専攻 複雑系工学講座混沌系工学研究室 特任助教

2004年公立はこだて未来大学システム情報科学部卒業.2008年同大学院システム情報科学専攻博士後期課程修了.同年日本学術振興会特別研究員 (PD).2009年札幌市立大学デザイン学部助手,2010年北海道大学大学院情報科学研究科助教.現在に至る.人間と人工物との持続的なインタラクション,飽きないゲームデザインに興味をもつ.

中村 光寿

中村 光寿
所属 : 公立はこだて未来大学
役職 : システム情報科学部情報アーキテクチャ学科 学生

1988年8月5日札幌生まれ.2007年公立はこだて未来大学システム情報科学部入学,現在に至る.生体情報処理,エンタテインメントコンピューティングに興味を持つ.

田中 伶

田中 伶
所属 : 公立はこだて未来大学
役職 : 情報アーキテクチャ学科 学生

1989年2月1日北海道生まれ.2007年公立はこだて未来大学システム情報科学部入学.ヒューマンインタフェース,ロボット工学に興味を持つ.

土門 裕介

土門 裕介
所属 : 公立はこだて未来大学
役職 : 情報アーキテクチャ学科 学生

2007年札幌国際情報高等学校情報システム科卒業.同年公立はこだて未来大学システム情報科学部入学.エンタテインメントコンピューティング,プログラミング,コンピュータグラフィックスに興味を持つ.

松原 仁

松原 仁
所属 : 公立はこだて未来大学
役職 : 複雑系知能学科 教授