他のエンターテインメント形式と比較すると、ビデオゲームのユニークさはゲームとプレイヤーのインタラクションであるといえる。プレイヤーの動作に反応できることは、ビデオゲームに本質的な特徴を与えている。スペースインベーダを撃ち落す、迷路を左右に動きまわる、敵を避けたり戦ったり、どの武器を選ぶか、さらには会話オプションを選択することなどがそうだ。
だが、プレイヤーは自分の動作によって固有な表現ができているだろうか?ゲームとは、あらかじめ決められたゴールに向け、ひたすら課題を学び、解決方法を習得していくものである。この学習と習得への集中は、プレイヤーの固有な表現を阻んでいる。プレイヤーはある程度の固有な表現、例えばどのタイプの武器を選ぶかとはできても、その程度にとどまっている。
ビデオゲーム開発者は、プレイヤー固有の表現や体験に焦点をあてたゲームデザインはほとんどしていない。ゲームのメインとなる目標へと近づくためには、プレイヤーへの縛りを強くしなければならないからだ。ゲームの品質が向上していく中で、開発者はこれまでより格段に多様化した手法を使い表現することが可能になっている。そのような環境にあっても、開発者はプレイヤーの動作に制限をつけ、明示的にゴールへと導こうとしがちである。この方法は、より強い印象および「あたかも映画を見ているような感覚」を与えるが、ビデオゲームが本来持っている可能性を損なっているだろう。
講演者は、プレイヤー固有の表現や体験は、より一層強くそして継続的な引き込み要素を提供できると信じている。従来からのゴールに導く縛りを失うことなく、プレイヤーにもっと固有の表現をしてもらうためには、どうすればよいのだろうか。講演では、いくつかの実例を挙げて、どのようなデザインがプレイヤーの固有な表現をどのように引き出す可能性があるのか、それがいかにしてプレイヤーをゲームに引きこむか、について述べる。
講演者プロフィール
Doug Church
Doug Church is an Nomadic game designer, programmer and producer. In the 90's he was part of teams that built some early PC first person action/role-playing games, such as Ultima Underworld, System Shock, and Thief. In the 00's he ended up working on smaller parts of several projects, including Deus Ex, Tomb Raider Legend, Boom Blox, and others. These days he is consulting on a range of game projects. He also has been involved in the Game Developers Conference, IGDA Education Committee, and various misguided cooking experiments.