音は人間の活動の全てに重要な情報を提供します。音楽や言葉については多くの研究がありますが、音とはなにか、あるいは、我々の活動に関係している音はどのように知覚認知されるかということは視覚情報に比べ、あまり研究されていません。Ecological AcousticsやAffordanceなど、ここ50年くらいで行われた様々な研究をベースに、音を人間はどのように活用しているか、さらには、音こそ我々の重要な情報であるということを解説します。
UXには時間と環境、空間といった概念が必要となり、デジタルコンテンツで音を扱う場合にはどのようなことを意識してデザインすればよいかを講演者が関わった事例をもとにお話しします。
講演者プロフィール
川上 央

1968年東京生まれ。東京大学教養学部を経て、日本大学大学院芸術学研究科修了。最近の趣味は流鏑馬。2005年フランス国立音楽音響研究所招聘研究員。コンピュータによる音のデザインを専門とし、電子音楽作品のリアリゼーション、フランス国有鉄道の誘導音を始め、公共空間、ゲーム、自動車などのサウンドデザインを多数手がける。
日本音楽知覚認知学会理事。日本音響学会音のデザイン調査研究委員会委員長。
第5回日本音響学会貢献賞受賞。
音響学講座10「音響学の展開」(コロナ社,共著)
製品音の快音技術~感性にアピールする製品の音作り~ (S&T出版,共著)
アンビエント・ミュージック1969-2009(INFASパブリケーションズ,共著)
《講演者からのメッセージ》
音は人と人とを空気の振動で繋ぐ最も原始的なコミュニケーションであり、さらには周囲の振動をキャッチして危険や状況を感じることができます。つまり、音や聴覚は言葉以前に人間のコミュニケーションツールであり、さらには、自分を取り巻く空間的情報を得るための重要なものです。しかしながら、音や聴覚は未知のことが多く、視覚情報に比べて研究者も少ないのが現状です。
今回は、知覚や認知という側面から、音と人間の関係についてお話しさせていただきます。デジタルコンテンツにおいて、音の扱いのヒントになれば幸いです。