2021年5月に標準化されたトランスポートプロトコルであるQUICは、Web業界をはじめ、既に様々な業界やプロダクトで採用され、ノウハウが蓄積されています。
しかし、ゲーム業界ではまだQUICに関する事例の共有が多くありません。
そこで、本セッションでは、まず「ゲームならでは」の視点にフォーカスしたQUICの機能やユースケースを共有します。
その後、セガのタイトルでのQUICの活用事例を紹介します。
【Sonic Rumbleの事例】
Sonic Rumbleは、32人がマルチプレイで対戦し、3つのステージを勝ち抜いて最後の1人として生き残ることを目指す、Unity製のパーティーロワイヤルゲームです。
このSonic Rumbleのリアルタイム通信にQUICを採用した事例を紹介し、実測データから得られたQUIC使用時のポイントを共有します。
【社内製リアルタイムネットワークライブラリ"SPHINGO"およびその採用タイトルの事例】
"SPHINGO"は、数人から数十人規模のリアルタイム通信対戦を行うためのネットワークライブラリで、既に20年近い歴史があり、セガ社内の複数のタイトルで採用されています。
今回は、この"SPHINGO"のプロトコルにQUICを追加した事例を紹介します。
各種プラットフォームにおいてConnection-Migrationを実装する際に苦労したポイントや、既存のSCTP/UDPベースの実装と比較した際の性能やリソースに関する実測データについても共有します。
講演者プロフィール
竹原 涼

2008年に株式会社セガにプログラマとして入社。
開発環境整備、ツール製作、ネットワーク、テスト自動化、グループ内カンファレンス主幹等ジャンルを問わない幅広い業務に従事。
最近の興味ある分野はサウンドQAの自動化・可視化とリアルタイム通信プロトコル。
【登壇歴】
CEDEC 2023 「CRI ADXプロファイラー活用によるサウンドQAの自動化・可視化に関する取り組みの紹介」
CEDEC 2021 「ダウンロード時間を大幅減!~大量のアセットをさばく高速な実装と運用事例の共有~」
CEDEC 2021 「Android iOS 実機上での自動テストをより楽に有意義にする為に ~端末管理・イメージ転送・動画記録等の周辺情報のノウハウ共有~」
Unite Tokyo 2019 「大量のアセットも怖くない!~HTTP/2による高速な通信の実装例~」
CEDEC 2018、CEDEC 2016、CEDEC 2015 プロダクション関連のラウンドテーブル
GDC2016 報告会 「GDC16にみる自動化技術とテストのトレンド」
《講演者からのメッセージ》
QUICが標準化されてから四年が経過しましたが、ゲーム業界における活用は予想以上に進んでいないのが現状です。
また、近年ではCEDECをはじめとする様々なカンファレンスにおいても、ゲームにおけるリアルタイム通信の課題に関する議論がトーンダウンしているように感じています。
一方で、ネットワーク技術や環境はますます複雑化しており、従来のアプローチで通信の品質を維持することが難しくなっています。
今回の活用事例の紹介を通じて、ゲームのリアルタイム通信に関する課題について、皆様と共に協議し、解決策を模索していきたいと考えています。
松崎大

リアルタイム通信ライブラリの開発からリアルタイム通信サービス用インフラの設計までリアルタイム通信づくしな仕事を担当しています。1998年セガ入社。
《講演者からのメッセージ》
RUDPを実装したくないという思いでQUICを選択しました。Unity+QUICというレアケースですが講演の内容が皆さまのお役に立てば幸いです。
藤村 隆史

1994年セガ入社。いくつかの業務用および家庭用ゲームタイトル開発に携わる。その後業務用ゲーム向けネットワークライブラリ開発、 Linux / Windows カーネルドライバ開発を経て現在は各種 MO タイプゲーム向けリアルタイム通信ライブラリ、フレームワークの開発、サポート等の業務に従事。
JAIPA主催「ゲーム・エンタメのネットワーク接続性に関する課題検討WG」に参加中。
《講演者からのメッセージ》
この度は CEDEC における講演の機会を賜り、誠にありがとうございます。
弊社ゲームのリアルタイムネットワーク通信についての研究開発に携わり早四半世紀、
今回の講演では、 QUIC を実際に運営するゲーム通信に導入してみた際の知見をお話できればと考えております。
ぜひ、興味のある方はセッション受講いただければと思います。