この講演では、イギリスの業界団体UKIEのデータをもとにイギリスのゲーム産業の洞察を提供するとともに、技術革新とデータ分析の先進国としての地位を背景に、日本企業が開発拠点としてイギリスを選択する際の利点を説明します。特に、イギリスの独自の開発文化と産学・官民連携が育んだゲーム業界は、日本企業にとって新たな機会をもたらす可能性があります。
また、スクウェア・エニックスのロンドンオフィスでのデータ収集やAIの取り組みの詳細についてケーススタディを通じ、どのように世界市場での競争力を高めるかを探ります。
講演者プロフィール
吉田 龍巨
ゲーム・広告業界で10年以上の経験を持つデータサイエンティスト。現在はSQUARE ENIX ロンドン支社でデータサイエンス担当ディレクターを務めています。2020年よりデータサイエンスチームを立ち上げ、欧米のオペレーションへの機械学習・AI機能の導入に取り組んでいます。
ロンドン支社では、過去15年間にわたりデータ・AI活用に注力してきました。また、近年ではデータマーケティングでの一定の成果とともに多くの教訓を得ています。これらの経験をもとに海外から日本のゲーム業界に貢献し、日本が世界のゲーム業界の先導者としてあり続けることを目指しています。
過去の講演:
Game Developers Conference(GDC) '23:
- Scaling data & AI to increase player engagement & satisfaction at Square Enix
Google Next Cloud London '23:
- Square Enix’s Data Evolution: From Data Lake to Customer Data Platform
《講演者からのメッセージ》
2018年にイギリスに来た当初「アタリショック後に日本のゲームが普及した」という話をした際、同僚から「ヨーロッパではアタリショックの影響は限定的だった」と指摘されました。さらに詳しく話を聞くと、イギリスには独自のビデオゲームの発展史があり、世界のリーダーとしての強い誇りを感じました。
また、イギリスの複数の一流大学ではビデオゲーム研究の大きなコミュニティがあります。ある博士号のプログラムは国の支援金によって学費は免除、生活費も支給され、STEM教育の応用分野としてゲームについて研究をし、それらの人材が多数ゲーム業界に排出されます。
このような情報を私が日本に居た時に知らなかった理由は、イギリスに住む日本人が少なく、とりわけゲーム業界で働く人も少ないためかもしれません。これが今回の講演を行う動機の一つです。
私の専門であるデータ分析については、19世紀の統計学から今まで続く歴史を持ち、アメリカと比較してもイギリス独自の発展が見られます。近年ではデータプライバシーと保護に関する法律の導入と、その実務上の対応は、ヨーロッパがこの分野で世界をリードしている一例です。
グローバル市場でゲームを販売する現代において、多くの日本のゲーム企業は海外に拠点を持っています。しかし、それらの拠点についてどれだけ理解し、活用できているでしょうか?この講演で話せることは限られますが、新しい考えのきっかけになればと思います。