リアルタイムCGにおけるポストエフェクト(ポストプロセッシングエフェクト)は、20年前の黎明期から大きく進化しています。
被写界深度やレンズフレア、モーションブラーといった光学的なエフェクトも、ある程度の写実性を達成していると言えるでしょう。
「ボケ表現」を例に取ると、スキャッタリング手法による滑らかなボケ、絞り羽根形状や口径食(レモンボケ)、収差シミュレーションによるボケ味の表現なども可能になっています。
しかし、それでも実写の巨大な「玉ボケ」などと比較すると、やはりその複雑さ、ディティール感などには依然として大きな隔たりがあります。
本セッションでは、実写レベルの光学エフェクトを実現するために従来のリアルタイム表現では足りない要素(一例として波動光学による回折模様など)を明らかにし、追加負荷の少ない実用的な実装手法とその結果を紹介します。
また、現状ではリアルタイム処理は難しくとも、将来可能になると予想される表現や、残された課題の解決技術などの展望も紹介します。
講演者プロフィール
川瀬 正樹
プログラマブル・シェーダ黎明期におけるグラフィクスエンジン開発で、さまざまな基礎技術を考案。
現在はシリコンスタジオ株式会社にてYEBISをはじめとするミドルウェア研究開発に従事。得られた知見は、CEDEC/GDC/SIGGRAPHなどの技術講演で業界への共有を図っている。
CEDEC AWARD 2009 プログラミング・開発環境部門ノミネート。
《講演者からのメッセージ》
また久しぶりの光学関連セッションになります。
あくまでリアルタイムツールとしての実用が目的であり、「物理的正確性」を第一義に目指すものではありません。
光学エフェクトとして本質的に重要な効果や、実用の際に表現力として重要な意味をもつ効果を追求しています。
そして少しだけ、実用上の重要性は低くとも、分かる人は心がくすぐられるような効果も含まれます。
まだ実写には遠いものの、光学エフェクトはある程度の到達点に近づいて来ているように思います。
従来のリアルタイム表現とは一線を画す最新の光学エフェクトの深淵を楽しんで頂ければ幸いです。