NPR 表現において輪郭線は非常に重要な要素です。
現在のゲームにおいては、軽量かつシンブルでリアルタイム用途として優れた押し出し法や画像処理フィルタを用いた輪郭線表現が主流になっています。
しかしこれらの手法は線の入り抜きのような繊細な線幅の調整などが苦手なため、よりイラストらしい高度な表現には適していません。
2022年に発表された論文 "GPU-Driven Real-Time Mesh Contour Vectorization [Jiang et al.]" とその Unity 実装 である StrokeGen は、ベクトル化された輪郭線のストロークをリアルタイムに生成する手法です。
リアルタイムのベクトルストローク描画は従来の輪郭線手法では為し得なかった様々な表現をもたらす可能性を秘めており、次世代のゲーム NPR 表現の一つの要素として StrokeGen は非常に期待の持てる技術です。
本セッションでは、StrokeGen のアルゴリズムについて詳しく解説し、どのようにしてリアルタイムにベクトルストロークを生成するのか、そのストロークを使ってどのような表現が可能になるのかを紹介します。
さらに、実際にゲームで StrokeGen を利用しようとしたときにどのような問題が現れるのか、どのように対策すべきなのかについての説明も行います。
また、アニメなどのオフラインの輪郭線表現から見たときに StrokeGen にどのような特性があるのかについても考察します。
次世代のゲーム NPR 表現について一つの可能性を提示し、現在様々なルック開発に取り組む方々の一助になれば幸いです。
論文の内容の解説は少し辛口ですが、新しい輪郭線表現の絵だけに興味のある人にもこの手法の特徴が伝わるように心がけます。
講演者プロフィール
川口龍樹
2017年に新卒でシリコンスタジオ株式会社に入社。
研究開発室に所属し、自社リアルタイムレンダリングエンジンの技術開発などレンダリング全般の研究開発に携わる。
CEDEC 2021 では「リアルタイムレイトレーシング時代を生き抜くためのデノイザー開発入門」を発表。
《講演者からのメッセージ》
ゲーム NPR におけるアウトライン表現は非常に大切な要素でありながら、思い通りの表現を突き詰めることはなかなか難しいものです。
今回解説する StrokeGen はその現状を打開する一つの要素となりえる新しい技術です。
技術解説の部分はどうしても難しくなってしまいますが、StrokeGen が作ることができる表現のみに興味ある方にも伝わりやすい講演になるよう心がけます。