インフラコストの削減・サーバを近くに置けない地域でより快適に遊んでもらうためにP2P通信を用いるのは有効な手法だ。とりわけ前者は円安・インフレによりタイトルの運用コストへの影響が大きくなっており、昨今重要度が増している。
P2P通信を採用する場合にはフォールバックとしてサーバ経由の通信を併用することが多いが、ご存知の通りIPv4の枯渇・通信品質劣化により、P2P通信がうまくいかずにサーバ経由の通信が増えてしまう傾向が近年続いている。
この問題はタイトルのIPv6対応とユーザ環境のIPv6普及が有効打となり終止符が打たれると思われてきたのだが、ここにきて、IPv6のP2P通信環境に暗雲が立ち込めてきたのだ。
このセッションでは、弊社タイトルのP2P通信ログとIETFで議論されている内容を元に、現在確認されているIPv6向けNATの種類を整理し、IPv4時代の分類では対応できない、新たな挙動定義を提案する。そして、それらを判定するための実装、及び、各判定結果から分かるゲームのIPv6通信へ与える影響・P2P通信を行うための対応実装について、自社ライブラリの対応事例と合わせて解説を行う。
講演者プロフィール
佐藤 元彦
2008年 株式会社コナミデジタルエンタテインメント入社。
オンラインゲームのネットワーク技術開発、特にNAT越えアルゴリズム、IPv4/v6デュアルスタックP2P通信ライブラリの開発を担当。近年はWANエミュレーションやモバイルネットワーク、IPv6/共存技術研究、IPv6 NAPTの標準化にも注力。
■ 最近の講演
JANOG53.5:Apple NAT64 環境下でのIPv6検証、それもうIPv6検証にはなっていないかも?
JANOG53:ついにIPv6向けUPnPが実運用フェーズに!〜 ゲームのP2Pオンライン対戦での活用フィードバックを添えて 〜
CEDEC2022:ゲームにおけるIPv6向けUPnPの活用可能性と実装検証
《講演者からのメッセージ》
ゲーム業界がIPv6に消極的で手をこまねいている間に、世界中でIPv6の活用が進み、さまざまなニーズや課題に対して技術・環境の変化が起きています。
従来は品質劣化を続けるIPv4環境に対して、シンプルで従来と同等の品質IPv6という構図の説明が妥当でしたが、今やIPv6も複雑化の兆しが見えており、アドレス割り当てやIPv4では見なかった種類のNAPTが登場したりと、暗黒期に突入しようとしています。
とはいえ、IPv4の品質崩壊は進んでおり、Steamのレビューで「need ipv6 support, my country not have enough public ipv4 address,we can't play with friend ! 」というトピックを見かけることも珍しくありません。つまり、IPv6から逃げ続けるのにも限界があります。
今年のセッションでは、令和最新のIPv6の現状とその対策を共有し、ゲーム業界としてIPv6を適切に活用してゆくための下準備ができればと思っています。