VR/人間拡張技術の発展により,例えばジャンプ力増強や,CGの重畳表示により手からエネルギー弾を発射するような映像効果を与えるなど,人間の能力や環境の増強・改変が可能となってきた.身体能力や環境が変化すれば,その条件下でのエンタテインメントも自ずと変化が求められる.超人スポーツとは,新しい身体,新しい環境で,自らの身体を使って楽しむための新たなスポーツである.この超人スポーツの実現に向けては,人間や環境を増強・改変するための技術と,そのような人が楽しむことのできるスポーツのデザイン手法とが,ともに進化していくことが求められる.本講演では,既存の球技を原型としてVR世界と融合する形での人間拡張の手法の提案実装,ならびにその技術に基づく球技の提案についての紹介を通じ、ゲームデザインの現実世界の競技への応用について示唆する.
講演者プロフィール
野嶋 琢也
2003年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).同年航空宇宙技術研究所入所.宇宙航空研究開発機構を経て,2008年12月電気通信大学大学院情報システム学研究科准教授.2016年4月より同大大学院情報理工学研究科准教授.現在に至る.超人スポーツアカデミーメンバー,日本バーチャルリアリティ学会理事.
バーチャルリアリティ,触覚インタラクション,超人スポーツ/オーグメンテッドスポーツ,エンタテインメントの研究に従事.
《講演者からのメッセージ》
学生時代,体育やスポーツは苦手でした.VRやエンタテインメントの研究に携わるうちに,人間拡張自分が既存のスポーツを楽しむことができないのであれば,自分が楽しむことのできるスポーツを作ってしまえばよい,ということに思い至り,スポーツ創造研究に着手しました.スポーツ創造は新しいエンタテインメント領域であり,VRやウェアラブルなど多様な技術が使われます.しかし何よりも重要なことは,バランス設計など,ゲーム開発の場において培われてきた知見がなければ前に進めないということです.ぜひ一緒に,新しいエンタテインメント領域を開拓していきませんか.
簗瀬 洋平
学生時代から日本コンピューターシステムメサイヤ事業部、株式会社キャリアソフト、株式会社コーエーネットなどでキャリアを積み、ソニー・コンピューター・エンタテインメント、アトラス、株式会社ゲームリパブリック、株式会社サイバーコネクトツーなどでゲームデザイナ/シナリオライタとしてゲーム制作に携わる。主なプロジェクトは「ラングリッサー」「グローランサー」「ワンダと巨像」「Folks Soul 失われた伝承」など。
代表作は「魔人と失われた王国」
2012年よりスクウェア・エニックスでリサーチャーに転進、現在はユニティ・テクノロジーズジャパンで学術・教育方面を担当しつつ研究者として活動。
2017年 Unlimited Corridorで文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞受賞
《講演者からのメッセージ》
ゲームの多くは情報科学や認知科学などの知見から成り立っていますが、我々がゲーム開発によって培ってきた様々な知見もまた学術の世界に有益なものをもたらします。ゲーム開発の世界が学術と産業を両輪として走っていけるよう手を携えていきましょう。