※このCEDECラボAIセッションはAI(1)とAI(2)の2セッションが3つの講演と最後にパネルから構成されます。 AI分野(1)では伊藤、西野の講演、AI分野(2)では保木講演および、講演者3名に三宅(株式会社フロム・ソフトウェア)を加えた4名による産と学から見た「ゲームとAI」についてパネルディスカッションを行います。 ゲームをプレーする人間にとって、対戦相手となるコンピュータの思考ルーティンや実時間で動くキャラクターの行動アルゴリズムは、重要なファクターである。人間は、一定の癖のある行動をとったり、単調な行動を繰り返したりする思考ルーティンや行動アルゴリズムには非常に敏感で、すぐにそれを見破って、興味を喪失させてしまう傾向がある。人間に行動を読ませないようにするために、安易に乱数を使って行動をさせるだけでは理知的な行動にはならないので、すぐに見破られ、逆に底の浅いゲームと思われてしまいかねない。人間にとって適度に手強く、人間的な思考を行っていると思わせるにはどうしたらよいだろうか?本講演では、まず、ゲームの理論的な分類を行った上で、人間的な思考アルゴリズムとは何かについて概観する。そして、コンピュータ将棋の分野からBonanzaの開発者である保木邦仁氏と、ロボカップサッカーシミュレーションから天才プログラマーの西野順二氏をお招きして、それぞれの先端的手法についてご講演いただく。これらの講演を踏まえて、人間にとって楽しい対戦相手となりうる思考ルーティンプログラミングについてパネル討論を通して考察していく。 西野講演概要 サッカーシミュレーションリーグは、1998年から続く国際大会も行われるロボカップサッカーのバーチャル部門です。物理シミュレーションされたサーバに独立なコンピュータプレイヤ22人が参加して、リアルタイムのプレイを行い、状況判断や行動計画など人工知能技術の検証に使われています。その有様は、まさにゲームと同じ仕組みで22人の同時プレイを行っているものです。 そのプレイヤの動きはまるで人間が試合をしているかのように高度になっています。 本講演では知的なマルチエージェントシステムがリアルタイムでどのように動くか、インフラとしてのバーチャルサッカー場から各個のエージェントの知的プログラム手法、関連技術などを解説します。
講演者プロフィール
伊藤 毅志
1988年 北海道大学文学部行動科学科卒業
1994年 名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程修了(工学博士)
1994年 電気通信大学情報工学科助手
2005年より デジタルハリウッド大学客員教授(兼任)
2007年 電気通信大学情報工学科助教
著書には、「先を読む頭脳」、羽生善治、伊藤毅志、松原仁(共著)、新潮社(2006)など
招待講演は、第7回情報オリンピック表彰式記念講演、「コンピュータに思考ゲームをさせる試み ~コンピュータ将棋・囲碁の最前線~」(2008).など
西野 順二
未踏ソフトウェア天才プログラマー
ロボカップサッカーシミュレーションリーグに長年参加し、
国際大会Organizing Comittee、日本大会実行委員などを務める。
サッカーロボットなどを対象にファジィ理論を応用した知的システムについての研究、多人数ゲームやマルチエージェントシステムに関する研究を行う。
●受講者へのメッセージ
未踏ソフトウェアでは、このへんに来たらこんなことをする、という「このへんファジィ推論」を利用して、中高生でも直感的にロボットサッカープレイヤを作れるシステムをOZEDを開発しました。 人間が自然に行っている、あいまいな状況判断をファジィ理論で処理するシステムがベースです。複雑さを増すゲームのなかで、コンピュータキャラクタにやわらかい判断をさせるとき役立つ手法です。