HDRレンダリングが当たり前の手段となって早10年、
ようやくディスプレイデバイスの出力もHDRに対応しつつあります。
HDR出力の概念自体は非常にシンプルで、最低限の対応だけなら難しくありません。
しかし、実際に魅力ある映像をHDR出力するためには、多くの考慮すべき点があります。
例えば、当面はディスプレイの最大輝度は決してHDRとして充分ではないこと。
従来のSDR出力は規格通りではなく、HDR規格への対応と相性が良くないこと。
コンテンツ制作フローレベルで色域を拡張することは、当面は容易ではないこと。
OSレベルでのHDR出力サポートは充分ではなく、プラットフォーム毎の対応が必要になること。
HDR対応テレビの大量導入は現実的ではなく、実際に確認できる環境が充分ではないこと。
等々。
すべてに明確な回答を示せる訳ではありませんが、
シリコンスタジオ株式会社によるHDR出力対応への取り組みと、
そこで得られたさまざまな知見について共有します。
講演者プロフィール
川瀬 正樹
プログラマブル・シェーダ黎明期におけるグラフィクスエンジン開発で、さまざまな基礎技術を考案。現在はシリコンスタジオ株式会社にてYEBISをはじめとするミドルウェア研究開発に従事。得られた知見は、CEDEC/GDC/SIGGRAPHなどの技術講演で業界への共有を図っている。CEDEC AWARD 2009 プログラミング・開発環境部門ノミネート。
《講演者からのメッセージ》
HDR出力は、解像度の向上以上に視覚に与える効果が大きく、大変魅力的な技術です。
しかし、HDRを活かせる映像で実際に比較してみないと違いが判りにくいこと、表示できる環境がまだまだ一般に普及していないことなどから、なかなか魅力を伝えられないのが難点です。
CEDECではシリコンスタジオブースでのデモ展示も行いますので、講演と合わせて少しでも魅力を伝えられればと思います。