ゲームAI分野のみならず、社会で人工知能という分野全体が、現在、大きな勢いで邁進しています。本パネルでは、現在、最も勢いのある人工知能分野を率いるリーダーをお呼びして、各分野の現状とこれからについてご講演をいただきます。密度の高いセッションの連続によって、人工知能分野全体の奔流を知ることができます。
後半では、それぞれの立場から、人工知能の未来とゲーム開発との関わりについてパネルディスカッションを行います。これによって、人工知能技術が、今後、どのようにゲーム開発に大きく導入されて来るかを見定めたいと思います。
詳細としては、まず、脳科学と計算科学を融合させる「全脳アーキテクチャ」(WBA, Whole Brain Architecture)を主導する山川氏から、全脳アーキテクチャ・イニシアティブの目指すところ、全体像、これからについてご説明頂きます。全脳アーキテクチャは、現在、学会、産業を巻き込む大きな流れとなっており、米、欧の同様のプロジェクトと並んで、社会で重要な役割を果たそうとしています。山川氏はそのリーダーであり、ゲーム産業にもわかりやすい形で取組みをご説明頂く予定です。
次に、中村氏からは、ディープラーニングを用いた人工生命のオープン・フレームワーク「LIS」について、ご講演をいただます。このフレームワークは、Unity上で動作し、ある程度のディープラーニングへの理解があれば、誰でも使いことなすことができ、ゲームに最も近いディープラーニングの一つとして期待されます。現在、ハッカソンやセミナーを通して、さまざまなアイデアが提案され、デモが作成されており、ゲームへの応用の橋頭保となることが期待されます。
最後に、ゲーム産業における人工知能の全体像を、海外のカンファレンスにおけるゲームAIの情報収集から、現場での設計・実装までを、幅広く深くこなす長谷氏よりご講演頂きます。ゲーム産業全体の人工知能の現状と、これから、アカデミックなゲームAI技術との関連を俯瞰的に説明して頂きます。
後半は、全脳アーキテクチャ、ディープラーニングを用いた人工生命、二つの取り組みと、ゲーム産業におけるAIが、どのように接面を持っていくことが可能かをテーマにパネルディスカッションを行います。
講演者プロフィール
三宅 陽一郎
京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。デジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。IGDA日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、DiGRA JAPAN 理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。共著『デジタルゲームの教科書』『デジタルゲームの技術』 翻訳監修『ゲームプログラマのためのC++』『C++のためのAPIデザイン』(SBCr)『はじめてのゲームAI』(WEB+DB PRESS Vol.68、技術評論社)。ゲームAIラウンドテーブル・オン・ツイッターを主催。最新の論文は『デジタルゲームにおける人工知能技術の応用の現在』(人工知能学会誌 Vol.30, Webで公開)。論文、講演資料はブログを通じて公開している。「y_miyakeのゲームAI千夜一夜」http://blogAI.igda.jp
《講演者からのメッセージ》
今年は4つのセッションを行います。
(1)最新のゲームAI技術である、戦術位置解析のセッション。こちらは、CryEngine ではTPS、Unreal Engine 4では EQSと呼ばれる技術で、キャラクターの周囲にポイントを生成して、そこから戦術に応じて求める位置を残すようにフィルタリング、評価するシステムです。
(2)群衆の人工知能。こちらは最新の成果を織り込んだ実践的なデモを行います。
(3)「人狼知能」コンテストです。こちらは昨年も開催しましたが、今年は人工知能学会30周年を記念してCEDECとのコラボイベントとして開催いたします。「人狼」におけるAIを対戦するエキサイティングな大会です。是非、予選にも参加してください。「人狼知能」プロジェクト http://www.aiwolf.org/
(4)パネル「人工知能の未来へ」全脳アーキテクチャ、人工生命を先導する研究者を招待し、ゲーム産業との接点を見出します。よろしくお願いします。
中村 政義
2010年、プロバイダ企業に新卒入社しデータ分析や新規事業に従事。2014年からドワンゴ人工知能研究所で運動制御の手法の研究開発を行う。近年は機械学習の学習環境としてゲームエンジンUnityを簡単に利用できるツール"LIS(Life in Sillico)"を提供。深層学習を使ってUnity内のキャラクタAIを作って遊べる「超人工生命」イベントとして開催している。また、仕事の傍ら人工生命のシミュレータを作り続けている。
《講演者からのメッセージ》
深層学習の進展により、ゲーム内のキャラクタが「カメラ画像から世界を認識する」ことが徐々にできるようになってきています。この技術で遊んで楽しむことを目的として、深層強化学習を実装したキャラクタをゲームエンジンUnity内で学習させることができるようにしたツール"LIS"の説明と、諸活動をご紹介します。
長谷 洋平
2009年、株式会社バンダイナムコゲームスに入社。
エースコンバットシリーズ、鉄拳シリーズなどにゲームプレイプログラマとして携わる。
現在はAIプログラマとしての研究・開発が主な業務。
・過去講演
複数タイトルで使われた柔軟性の高いAIエンジン, CEDEC2015
《講演者からのメッセージ》
新たなエンターテインメントの創造にはアカデミックな分野で研究されている最新の技術を応用することが重要になります。アカデミックの方にもわかりやすいよう、ゲーム産業におけるAIの現状、課題を説明し、双方の架け橋になれればと思います。
山川 宏
山川 宏
Horoshi Yamakawa
略歴
1965年2月8日 埼玉県生まれ
NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表
人工知能学会 副編集委員長
電気通信大学大学院 情報システム学研究科客員教授
玉川大学脳科学研究所 特別研究員
人工知能学会汎用人工知能研究会主査
産総研人工知能研究センター客員研究員
専門は,人工知能,特に,認知アーキテクチャ,概念獲得,ニューロコンピューティング,意見集約技術など
工学博士
1987年:東京理科大学理学部物理学科卒業
1989年:東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 修士課程修了
1992年:東京大学大学院 工学系研究科 電子工学専攻 博士課程修了
1992年:(株)富士通研究所入社
1994年:同社から通産省リアル・ワールド・コンピューティング・プロジェクトに参加
2014年:(株)ドワンゴ 人工知能研究所 所長
2015年:産総研人工知能研究センター客員研究員就任
2015年:特定非営利活動法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 代表就任
2015年:電気通信大学大学院 情報システム学研究科客員教授就任
現在に至る
《講演者からのメッセージ》
数年前は,深層学習の優位性はパターン認識に留まるようにみえましたが,2016年現在において,言語,時系列,注意,記憶,推論,マルチモダル等を含むものに拡大しています.こうして専門家の想像すら超えて進歩し続けている理由は,やはりAIの本質的問題が深層学習により大きく切り崩されたからと思わざるをえないでしょう.こうした背景から我々が推進している,脳全体のアーキテクチャに学んで人工知能を構築する,全脳アーキテクチャという研究アプローチについて解説を行い,さらにその研究開発と普及を支える組織としての達NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)の紹介を行います.