本セッションでは、ピュアJavaまたはObjective-Cで別個に開発されたAndroid/iOS各プラットフォーム向けクライアントコードベースを、Cocos2d-xへの単純移植ではなく、既存アプリへのプラグインのようにCocos2d-x自体をまるごと組み込むこと(embed)により、移行のコストとリスクを最小限に抑制しつつ統合してゆく手法をご紹介いたします。
スマートフォン普及初期に開発され長期運用されてきたプラットフォーム別クライアントアプリは、クロスプラットフォームのゲームエンジンを用いるモダンな開発スタイルに比べると二重の開発コストを要する非効率な技術的負債となりがちです。負債解消のために異なるゲームエンジンへの移植を検討したとしても、直接的利益を生まない移植作業に開発人員を一定期間アサインするコストや、多数のファンを抱えるゲームを再実装した場合に発生しうるリスクから、移植の実行を躊躇する場合もあるのではないでしょうか。
この問題に対処するため、本セッションは、Cocos2d-xの構造を解説しながら、数千万ダウンロードを優に超える歴史ある大規模モバイルゲームアプリでのクライアント統合プロジェクトの思考過程と技術的手法をご紹介します。CEDEC 2016の標語「Now is the Time!」に表れているように、成熟した既存ツールの枠組みを外れた道を歩ける立体的視野が失われがちな昨今こそ、ゲームエンジンが依拠する背後の構造を知り、技術的負債を解消して次に進む力を身につける良い機会となるはずです。
講演者プロフィール
久富木 隆一
グリー株式会社にて、内製ゲームスタジオのエンジニアとしてモバイルゲーム開発に従事。GREEの大規模Webソーシャルゲームから、iOS&Androidネイティブゲームアプリ開発(Unity/Cocos2d‐x/OpenGL ES)まで、国内/海外市場に向けた幅広いプロジェクトに携わる。著書に『ゲームアプリの数学 Unityで学ぶ基礎からシェーダーまで』(SBクリエイティブ刊)がある。
《講演者からのメッセージ》
Unity等のソリューションと対比した場合のCocos2d-xの特性について、Android/iOSのプラットフォームSDKの構成を絡めつつ、実装レベルで掘り下げてお話します。Cocos2d-xを使う機会が無かったとしても役に立つ、モバイルゲームアプリ開発の効率化や抽象化のための考え方もお伝えできればと思います。