提案者らは,人間の肌のような半透明物体のリアルタイムレンダリング法について研究を重ねてきた.本研究では"Translucency Magnitude (TM)"と呼ぶ特徴量を定義し,これを用いて表面下散乱をモデル化することで半透明物体の写実的なレンダリングを実現するリアルタイムシェーダを開発したので,本講演ではその理論と実装の詳細を紹介する.TMは物体上の任意の点への表面下散乱光の伝わりやすさを評価するように設計されたパラメータである.TMを用いることで,本手法では物体の厚みの小さい部分に透けたように見える表面下散乱光がより忠実に再現できるようになった.本シェーダを動作させる対象デバイスとして,より計算リソースにシビアなスマートフォンなどのモバイルデバイスを想定している.そこで実際にWebGLを用いて本手法を実装し,iPhone5Sで動作させたところ,十分にリアルタイムでのレンダリングが可能であった.本手法の特徴として、既存の制作工程、及びレンダリングパイプラインに大きな変更無しに実装できる点が挙げられる.本発表では想定されるワークフローについても紹介する予定である.
講演者プロフィール
久保尋之
早稲田大学理工学術院助手(2011-2012),キヤノン株式会社(2012-2014)を経て現在に至る.スキンシェーダの研究成果をCEDEC2010, CEDEC2011にて講演.
《講演者からのメッセージ》
半透明な物体を表現するためのシェーダです.本手法はシングルパスで実行可能で,既存のレンダリングパイプラインをほとんど修正する必要がありません.WebGLで実装済み.ぜひ見に来てください.