「デモシーン」は日本ではあまり知られていませんが、ヨーロッパのゲームや音楽・映像のエンターテイメント業界では有名なコンピューターサブカルチャーです。
「デモパーティ」と言われるイベントで、多くの参加者が実行プログラムによる映像作品と食べ物や飲み物を持ち寄り、大画面での上映を楽しみます。
日本では、「Tokyo Demo Fest」というデモパーティが開催され、ヨーロッパからも多くの人々が参加します。
デモシーンの世界では、4KB や 64KB の exe ファイルという厳しい容量制限の中で美しい映像を実現するため、複雑なモデルをプロシージャルに生成してレンダリングする独特の手法が発展しています。
これはゲーム制作の現場とは縁が薄い技術でしたが、近年ゲームや映像の業界でもアセットのプロシージャル生成の手法が注目を集めつつあり、デモシーンの世界の手法が実プロダクションで用いられた例も出てきています。
本セッションでは、長年デモ制作を行ってきた経験者による制作の解説を交えつつ、デモシーンの世界のプロシージャルモデリングやレンダリング手法について解説し、それをゲーム開発の現場でどのように応用できるかについて考察していきます。
* 本セッションは CEDEC 2016 のセッション "デモシーンへようこそ 〜 4KBで映像作品を作る技術 〜" の応用編になりますが、そちらを見ていなくても理解できる内容となっています。
また、ここで言うプロシージャルモデリングというのは、ほぼ distance function & raymarching を指します。
講演者プロフィール
石橋 誠也
経歴:
ローレベルプログラミング、グラフィックスプログラミングを好み、CPU や GPU を全力でぶん回して美しいインタラクションを実現することに生き甲斐を見出す。フロムソフトウェア、スクウェア・エニックスを経て現在は Unity Technologies Japan に勤務。 @i_saint
《講演者からのメッセージ》
distance function & raymarching を用いたレンダリング手法は、一昔前は demoscene でしか使えない変態テクニックと言われていましたが、偉大なる先人たちや愛好家たちの努力によって徐々に市民権を得、現在は局所的ながらゲームや映像作品に使われる事例も出てきました。
今回は単なる紹介に留まらず、実プロダクションで使うことを強く意識した解説を行います。
Julien Guertault
経歴:
2004年よりプログラマーとして、フライトシミュレーションからビデオゲームまでの間、パソコン、モバイルやVRで働いていました。2015年より「スクウェア・エニックス株式会社 テクノロジー推進部」に入社し、グラフィックスエンジニアとしています。
または、2009年より64kBと物語に沿ってビジュアルの作品を作ってるCtrl-Alt-Testと言うグループでデモシーンに参加しています。
2011で日本付き次第、Tokyo Demo Festに入りました。
《講演者からのメッセージ》
とても面白そうなテクニカルとデザインの難題はいっぱいありますが、業界には経済的ではない問題も存在します。例えば、かなり小さいバイナリファイルの中ですごいエフェクトを作るに興味があまりないのです。しかしプログラマー、デザイナ、ミュージシャンはたまにその興味が合って、デモシーンで機会を取れます。そうやってみると、大きい学習になったり、仕事にも予期せぬ益するかも知れません。