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2011年09月06日(火)11時20分〜12時20分
形式: セッション(60分)
セッションの内容
光は空気中から水中に入るとき屈折します。光線は異なる2点間を最短時間で結ぶ というフェルマーの原理によって説明できます。これを数学的に定式化したものが変分原理です。物体の運動を支配するニュートンの法則はハミルトンの最小作 用の原理という変分原理によって記述できます。長年の研究の積み重ねによって、自然現象があまねく変分原理によって記述できることがわかってきました。イ ルカはバブルリングと呼ばれる空気の輪っかを作って遊びます。これを渦輪といいます。渦輪の運動は、渦のトポロジ―を保つという制約のもとでのエネルギー 最大の状態と特徴づけられます。流体は無限個の粒子の集まりと考えられるので、無限次元空間における変分原理になります。渦のトポロジーを保つという制約 条件を組み込んだ変分原理をオイラー・ポアンカレの原理といいます。エネルギーをコスト関数で置き換えると、オイラー・ポアンカレの原理がそのままコン ピュータ・グラフィックスの一種であるコンピュータ・アナトミー(CA)に適用できます。CAは形態変化をコンピュータ上で描く技法の一つで、大きく変形 する生物体の形態変化の解析などに用いられます。対象物を含む空間全体を変形させることによって、対象物を初期形状から目的形状までスムーズに変化させま す。各点での変形速度から全空間でのエネルギーに対応するものが計算できますが、これからコスト関数が作られます。光線と同じように、この変形は(無限次 元空間での)測地線に沿って行われているという見方もできます。後半では、CAの内容をかみ砕いてお伝えしたいと思います。
講演者プロフィール
福本 康秀
所属 : 九州大学
役職 : マス・フォア・インダストリ研究所<br/>教授