本研究では、光弾性と柔軟で柔らかな透明弾性体を使い、「様々な形状」、「様々な触り心地」、「様々な触り方」を実現できる新しくて楽しいタッチパネル「PhotoelasticTouch」を提案する。
最近、複数点の同時検出が可能なマルチタッチ技術が盛んに研究されている。しかし、既存のタッチパネル技術は、指で触った際に得られる「触覚フィードバック」に乏しいという問題があった。さらに、ディスプレイに表示されたコンテンツに「触れる」という動作も、ただ指先や手の平で「軽く接触する」だけに限られ、引っ張ったり、つねったり、摘んだりすることは不可能であった。そのため、立体的な形状や、人肌のような柔らかいテクスチャを持ったコンテンツに触れる際に、そのコンテンツの持つ立体感や柔らかさを、感じることができないという問題があった。この問題の大きな原因の一つとして考えられるのは、従来のディスプレイの接触面が「平面的」で、「硬かった」点である。
本研究では、これらの問題を解決するために、液晶ディスプレイ(LCD)とLCDの「偏光」、さらに透明弾性体の持つ「光弾性」という現象を利用し、透明弾性体に加えられた様々な接触動作(触る、押し込む、摘む、引っ張る等)をリアルタイムに検出することができる新しいタッチパネル技術を提案する。
本システムは、LCDとカメラ、偏光フィルタというシンプルな構成のテーブルトップシステムである。
LCDの光は偏光であるため、カメラに偏光フィルムを装着することで遮断することができる。しかし、このときLCD上に力が加わった弾性体がある場合、弾性体の持つ光弾性という性質により、LCDの偏光は楕円偏光に変化し、カメラ側のフィルムを通り抜け、カメラに撮影される。これにより、弾性体の変形はシンプルな画像処理を用いて検出することが可能になる。
ポスターセッションでは、本システムのデモンストレーションと、本技術のエンタテインメント方面への応用について議論を行いたい。
講演者プロフィール
佐藤 俊樹
2006年 電気通信大学 電気通信学部 情報工学科卒業.
2007年 同大学大学院情報システム学研究科 情報システム運用学専攻 博士前期課程修了.
2009年現在,同大学院 情報メディアシステム学専攻 博士後期課程在学中.
コンピュータビジョンのヒューマンコンピュータインタラクションへの応用,特にインタラクティブサーフェイスやエンタテインメント応用に興味を持つ.
2008年日本ソフトウェア科学会WISS2008ベストペーパー賞受賞.
日本学術振興会特別研究員.
ACM,情報処理学会各学生会員.
徳井 太郎
2008年 電気通信大学電気通信学部卒業
同年 電気通信大学大学院情報システム学研究科入学
小池 英樹
1991年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.工学博士.
電気通信大学助手.助教授を経て,現在同大学教授.
1994~1996年,1997年UC Berkeley客員研究員.
2003年Sydney大学客員研究員.
2002~2005年内閣官房内閣事務官(情報セキュリティ).
HCIの研究に従事.特に情報視覚化,Vision-based HCI,
視覚化やモバイルを利用した情報セキュリティシステムに興味を持つ.
福地 健太郎
2000年東京工業大学大学院情報理工学研究科修士課程修了,2006年博士号取得。
2010年より現職。
リアルタイム動画像処理ソフト「EffecTV」,人体形状センサを応用した多人数向けテーブルトップゲーム「Marble Market」,レーザーポインタを使ったステージパフォーマンス用ソフト「Laser Trail Tracker」などを発表。
ユーザーインタフェースやエンタテインメント応用, 音楽・映像分野との協調に興味を持つ。
ACM,情報処理学会各会員。
2002年FIT 船井ベストペーパー賞受賞。