資料を資産へ、スクウェア・エニックスにおけるゲーム開発資料発掘プロジェクト [Wonder Project J編]

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日時:
2021年08月24日(火)18時50分〜19時50分
形式: レギュラーセッション(60分)
受講スキル:
・社内の資産管理に興味がある方 ・ゲーム開発史に興味がある方 ・タイトルのプロデュースに興味がある方
受講者が得られるであろう知見:
・過去資産のライブラリ化についての知見 ・ゲーム開発のプロデュース
セッションの内容

 スクウェア・エニックス社内で進められている過去資産のサルベージプロジェクト「SAVE」の活動と、そのサルベージ過程で得られた過去のタイトルの資料と、当時の開発関係者による現場の生の声を聞くセッションを行います。このようなセッションを行う目的は、過去の開発資料を現在の資産へと変えることです。おそらくはゲーム産業全体が抱える放置された過去タイトルの開発資料へと目を向け、それらを会社の資産と転じる契機として頂くことで、日本のゲーム開発の歴史が再認識され、日本のゲーム産業全体の潮流を取り戻す一助になりたいと考えております。
 そこでスクウェア・エニックスでは、サルベージした資料を本セッションで公開するだけではなく、資料の関係者に話を伺うセッションとすることで、25年以上を経た資料が現在に対して持つ価値を示したいと考えています。前半は歴史・規模の大きなゲーム会社における過去資産管理の問題点への言及と、大量のアナログデータのライブラリ化手法についてお話します。
 後半は具体例の一つとして、今回の活動の中で得られた「Wonder Project J」(1994)「Wonder Project J2」(1996)の詳細な開発資料とともに、当時の同タイトルのプロデューサーである藤本広貴から、SFC時代のゲーム業界についての話と、そのなかで「Wonder Project J」をどのように制作していったかについて話させていただきます。
 このように本セッションでは、前半では過去資料をサルベージする意義とその方法について、後半ではその中の一つの具体的な資料にフォーカスを当てて、どのように現在の開発に生かしていけるかを解説いたします。過去のゲーム業界がどのようなものだったかという当事者の言葉と、現在から過去資料を見返したときにある新しい発見を提示することは、新旧問わず業界にとって非常に重要な知見となると考え、皆さんと共有したいと思います。


講演資料

  • CEDEC_Save_and_Wonder_2021_8_24_Fujimoto_Miyake.pdf

※資料のダウンロードにはログインが必要です。


講演者プロフィール

三宅 陽一郎

三宅 陽一郎
所属 : 株式会社スクウェア・エニックス
部署 : テクノロジー推進部
役職 : リードAIリサーチャー

2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。スクウェア・エニックス・AI&アーツ・アルケミーCTO、立教大学大学院人工知能科学研究科特任教授、九州大学客員教授、東京大学客員研究員。人工知能学会理事・シニア編集委員、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、IGDA日本ゲームAI専門部会チェア。単書『人工知能のための哲学塾』 『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』『人工知能の作り方』『ゲームAI技術入門』『なぜ人工知能は人と会話ができるのか』『<人工知能>と<人工知性>』『人工知能が「生命」になるとき』。共著『高校生のためのゲームで考える人工知能』『ゲーム情報学概論』『FINAL FANTASY XVの人工知能』

《講演者からのメッセージ》
ゲーム産業はこれまで前へ前へと進んできました。その歴史と資産はたいへん貴重なものですが、これまで、あまり整理・編纂することは少なかったかと思います。しかし、それは未来へ向けての力になります。本セッションでは一つの事例を通して、過去の資産を保全・編纂し、アクセス可能にすることで、いかに社内の活性化につながるかをご説明いたします。また、このような試みが各会社で推進されることを望みます。

藤本 広貴

藤本 広貴
所属 : 株式会社スクウェア・エニックス
部署 : 第四開発事業本部ディビジョン1(プロデュース&制作)
役職 : シニアマネージャー/プロデューサー

1992年に現在のSQUARE ENIXの前身であるENIXに入社。
「ワンダープロジェクトJ」「ワンダープロジェクトJ2」「常勝麻雀天牌」「オレが監督だ!激闘ペナントレース」「いただきストリート3」その他、約10年間家庭用ゲームの制作を行う。
2002年よりモバイルゲームの制作部門に異動し、複数の携帯電話用ゲームアプリをプロデュース。
2004年~05年の約1年間、シアトルの子会社に出向しUS向けへ携帯アプリの制作、配信を行う。
2007年よりスマートフォン用ゲーム制作に軸足を移し、FINAL FANTASY III~VIのスマートフォン用アプリのプロデューサーを務める。
現在、「FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS 」Global版 及び 「WAR OF THE VISIONS FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS」Global版のプロデューサーとしてGlobalマーケットに向けてゲームを配信している。

《講演者からのメッセージ》
90年代のゲーム制作の資料やそれにまつわるエピソード、当時の現場の状況などから、今ゲームを作っている人達に役に立つような事やゲーム制作のヒントが、少しでもご提供できれば幸いです。

共同研究・開発者

坂田新平(株式会社スクウェア・エニックス)