レイトレ時代のゲームグラフィックス、地に足をつけて備えよう - NVIDIA Falcor で次世代品質のリアルタイム物理ベース照明を手軽に素早く検証する -

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日時:
2021年08月24日(火)16時10分〜17時10分
形式: レギュラーセッション(60分)
受講スキル:
* リアルタイム・グラフィックス初心者で、物理ベース照明を触って理解したい方 * 2025年 リアルタイム・レイトレ時代、2035年 リアルタイム・パストレ時代に備えたいエンジニアやアーティストの方 * リアルタイム物理ベース照明について、プロジェクトや技術検証の導入前にハマりどころや検討事項を知りたい方 * リアルタイム物理ベース照明のテストやデバッグについて具体的に何をすればよいか知りたい方 * NPR, Stylized 照明をやる前に物理ベース照明で土台を作っておきたい方 * 最新のリアルタイム大域照明手法について、触って把握したい、もしくは実装してみたいと考えている方 * リアルタイムグラフィックス描画の実験で、提案手法と既存手法を手軽に実装できる環境が知りたい方 * 実践可能なグラフィックス向けテスト駆動開発の環境とテストケースを探している方
受講者が得られるであろう知見:
* Maya Arnold を青写真とした場合に、リアルタイム物理ベース照明とマテリアルの実装方法 * アーティストによる、Maya Arnold とリアルタイム・パストレーシングを用いた照明の定量的な評価方法が具体的に触って確認できる * アーティストによる、リアルタイム物理ベース照明の定量的な評価のためのテストシーン、テストアセットの作り方 * NVIDIA Falcor を活用したリアルタイム・グラフィックス向け機能を高速にプロトタイピングできる環境の作り方 * 青写真とリアルタイムの二画面で必要に応じてリアルタイムで照明することで、アーティストが素早く陰影や動きの差異が具体的に確認でき、目指す照明を関係者で具体的に共有できる方法がわかる * ハイエンドPC からゲームコンソール Switch まで動作するスケーラビリティを考慮したマルチスケール・リアルタイム大域照明の実装と課題が具体的にわかる * グラフィックス・テスト駆動開発において、Python と描画グラフを活用することで、描画機能ごとに独立並行して実装しながら、複数人での開発でクラッシュやデグレードが限りなくゼロに近づけられること
セッションの内容

 本セッションでは、NVIDIA Falcor とDXR を活用して、ゲームエンジンおよびゲームへの組込を目的とした次世代品質のリアルタイム照明検証環境を手軽に素早く構築する方法を説明します。検証環境で得た結果を、これからのゲームやゲームエンジンで動作実現できるように、物理ベース照明の実装検証だけでなく、ゲームグラフィックスの照明品質向上に大きく寄与するリアルタイム大域照明の実装と検証についても説明します。リアルタイム・レイトレとラスタライズのいいとこどりな最新の方法です。その他、ランタイム性能を出すためのLightmap や直接光のライト・ベイキングについても紹介します。
 本環境は、アーティストやエンジニアが青写真(リファレンス) とリアルタイム(in-engine/in-game)の結果をL1/L2 誤差比較やどちらか一方を描画するだけでなく、二画面でリアルタイムに確認できるようにしました。そうすることで、アーティスト、エンジニアなど関係者が陰影や物体や照明の変化について差異が直感的に把握でき、関係者の間でその差異や要望を具体的に共有して目指す照明結果に素早く到達できました。青写真は、Maya Arnold レンダリング画像、本環境のリアルタイム・パストレーシング、アーティストによるレタッチ画像です。
 具体的には下記9点について説明します。
1. NVIDIA Falcor 概要 - リアルタイム・グラフィックス高速プロトタイピング環境
2. NVIDIA Falcor 機能 - 青写真とリアルタイムの二画面で、よりわかりやすく差異を検出
3. NVIDIA Falcor 特長 - グラフィックス向けテスト駆動開発で、クラッシュやデグレード発生が限りなくゼロに漸近していく
4. BANDAI NAMCO Studios (BNS) リアルタイム照明の検証フロー
5. リアルタイム物理ベース照明の光源設計とSI単位系の導入
6. マテリアル Arnold Standard Surface 互換の実現
7. 物理ベース照明のための各種描画パスの設計と実装
8. ライト・ベイキング、最新のリアルタイム大域照明手法でスケーラビリティを確保し、リアルタイム照明の品質向上
9. リアルタイム物理ベース照明のデバッグとテストシーンの作り方

 本発表で紹介する検証環境構築の知見は、2025年リアルタイム・レイトレ、2035年リアルタイム・パストレ時代の到来に備えて、ゲームの商品価値向上に寄与するだけでなく、ゲームグラフィックス制作フローそのものの効率化について良いアイデアの素になると思います。それから、リアルタイム照明のテストや青写真との比較方法を紹介しますので、これからリアルタイム・グラフィックスの照明を扱う初学者や開発者にも参考になると思います。


講演資料

  • CEDIL_CEDEC2021_GameGraphicsWithRayTracingOnFalcor.zip

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講演者プロフィール

森重 伸也

森重 伸也
所属 : 株式会社バンダイナムコスタジオ
部署 : 技術スタジオ コアテクノロジー部エンジンユニット
役職 : グラフィックス・エンジニア

修士(工学),東京工業大学 大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修了(現:情報理工学院).
株式会社バンダイナムコスタジオにて,リアルタイム・グラフィックスについて技術研究開発に取り組んでいます.
現職にて,今後のビデオゲーム/コンピュータゲーム向けに最新グラフィックス技術を用いた照明の技術検証や機能開発について,オープンソースの描画フレームワーク NVIDIA Falcor を使って取り組んでいます.
個人活動として,情報処理学会の研究会にて,定期的に最新学術論文の実装報告や研究成果を発表して産学の技術交流を推進しています.

《講演者からのメッセージ》
オープンソースの描画フレームワーク NVIDIA Falcor は,レイトレとラスタライズのいいとこどりが実現できるモジュール化された描画グラフ,C++ / Lua ライクなシェーダ言語Slang,グラフィックス・テスト駆動開発ができます.Falcor を用いて,光源から大域照明まで設計実装,ハマった点やテストについて,具体的に地に足をつけて共有することで,これからのリアルタイム・ゲームグラフィックス開発現場の参考になれば,と思います.
そして,今後の2025年リアルタイム・レイトレ,2035年リアルタイム・パストレの時代に備えましょう.

「富士はやはり登ってみなければわからない」,科学者とあたま,寺田寅彦より
リアルタイム・ゲームグラフィックスの開発現場では,システムを作りながら絵を出していくため,何を正解とするかがぼんやりとしたまま物事が進んだりして,システムの問題か,Graphics の問題かの切り分けが難しかったり,そもそも不可分な問題なのかの見極めが難しいことに遭遇します.一方で,アーティストは理想とした絵とin-game の結果をなるべく素早く比較したくなります.そのような要望を実現するために,NVIDIA Falcor を活用して,物理ベースレンダリング,ゲームレンダリングの着地点をおおまかに決めて,その後,システムをつくるという段階的な進め方を採用することができます.そういった点も共有できれば、開発現場の改善につながると期待しています.よろしくお願いいたします.

鈴木 雅幸

鈴木 雅幸
所属 : 株式会社バンダイナムコスタジオ
部署 : 技術スタジオ コアテクノロジー部 サポートユニット TAセクション
役職 : エンジニア

キャラモデリング、モーション、背景、ライティングアーティスト、シェーダーアーティストを経て、現在はTAとしてグラフィックに関する研究や各プロジェクトのサポート業務を行っています

《講演者からのメッセージ》
TAとしてライティングが正しいかどうかを検証をする上での内容を紹介します。

横田 聖二

横田 聖二
所属 : 株式会社バンダイナムコスタジオ
部署 : 技術スタジオ コアテクノロジー部 サポートセクション TAパート

ポストプロダクションにてCMや映画の全般的なCG制作を担当、その後、ゲーム開発会社にてキャラモデリングを主に担当しつつ、モーション、エフェクト、シェーダー、テクニカルアーティストといった様々なセクションを経験し、2021年に株式会社バンダイナムコスタジオに入社。
現在はTAとして、アセット制作、ツール制作等を行っています。

《講演者からのメッセージ》
グラフィックのプログラマーとの連携、データについての考え方、作業工数と見た目のバランスについて等。
グラフィックの検証をする上でのヒントになれば嬉しいです。

道上 弘志

道上 弘志
所属 : 株式会社バンダイナムコスタジオ
部署 : 技術スタジオ コアテクノロジー部 エンジンユニット グラフィックスセクション
役職 : エンジニア

株式会社セガを経て、2020年に株式会社バンダイナムコスタジオ入社。
グラフィックスの研究開発に従事しています。

《講演者からのメッセージ》
Falcorを実際に使用されたことがある方、ご存じの方、初めて知った方も、今後のグラフィクス開発の一助になれば幸いです。