『#リリア謎』は2025年3月から2026年1月にかけて、小説家の河野裕氏と協力して制作・実施したARG(日常浸蝕ゲーム/代替現実ゲーム)である。
本ARGは「深宇宙展」および放送100年「NHK宇宙・未来プロジェクト」の関連施策を横断的にプロモーションするLINEアカウント『リリア from Deep Space』内で行われた。
ARGは、2025年12月にNHKで放送されたテレビドラマ『火星の女王』と世界観を共にしており、体験することで深宇宙に対する興味を喚起し展覧会に誘客するとともに、ドラマの世界観の理解が深まるという、まさに世界観プロモーションとしてのARG活用の事例でもあり、同時に、単独の体験型コンテンツとしても体験者から高い評価を受けている。
また、本作の大きな特徴として、LINEの活用が挙げられる。
近年、多数の賞を獲った『Inscryption』を筆頭に、メインコンテンツを補強し、世界観を深く伝えるために、日常的なメディアへ物語を侵蝕させる手法が話題を呼んでいる。
そうした体験を計画する際に、国内においては、LINEは普及率が高く、またトークルームで1対1の体験を作りやすいため、候補に挙がりやすい。
実際、LINEの使い勝手は良く、ARG、謎解き、マーダーミステリーなど、体験型ゲームにおいてLINEが使われることが増えている。
しかしながら、その活用方法はテキストの選択とその反応のみのやり取りだったり、謎解きの答え合わせだったり、資料の画像化だったりと、LINEの機能を充分に活かしきれていないものが多いのが実情である。
そんな中、本作では、LINEの機能をさまざまな形で活用し、参加したプレイヤーから「LINEでこんなことまでできるとは思わなかった」「これはもう1つの単独アプリと言っていい内容では?」と言われるほどの高い評価を得た。
本セッションでは『#リリア謎』がどのような構造でプレイヤーの物語体験を生み出しているのか。そしてどのようにLINEを活用し、さまざまなゲームやミッションをどう実装していったかを解説することで、独自アプリを作ることなく、日常的なメディアを活用しながら、深い物語体験を作り上げる可能性を伝えたい。
講演者プロフィール
石川 淳一
PC-98/88版『大戦略』シリーズをはじめ、40年にわたってゲームデザイナー/ディレクターとして数多くのデジタルゲーム開発に参加。最近はARG(代替現実ゲーム)などの体験型エンタメも手掛ける。CEDECでも「ARG:プラットフォームに依存しない新しい遊び方」(2011年)、「トランスメディアストーリーテリングから学ぶ「ゲームで物語る」手法」(2019年)、「トランスメディアゲームの可能性」(2021年)「リアル世界のゲームデザイン」(2023年)、日常を侵蝕するゲームの作り方 」(2025)等で登壇。
体験型エンタメの情報サイト「体験型エンタメ情報局」編集人。IGDA日本 SIG-体験型エンターテインメント正世話人。
《講演者からのメッセージ》
ARG(日常浸蝕ゲーム/代替現実ゲーム)はさまざなま日常メディアを活用して物語を紡ぐ「トランスメディアストーリーテリング」の代表格です。今回はその中でもLINEを最大限に活用した事例として、専用アプリのようにスマホで没入できるARGがLINEだけでどのように作られたかをお伝えできればと思います。
清木 昌
1979年兵庫県生まれ。東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2004年任天堂株式会社に入社。以降、ゲーム業界にて、プラットフォーム開発からゲーム開発、R&D、新規事業開発を経験。現在は、株式会社ほぼ日のCTOとして、技術とアイデアを掛け合わせた新しいコンテンツ作りを続けている。
代替現実ゲーム(ARG)の可能性に惚れ込み、2009年にNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA 日本)にて「代替現実ゲーム専門部会(SIG-ARG)」を創設。現在もARGエンジニアを自称し、ARGの普及・啓蒙活動を行う。ARG領域での代表作は「3D小説『bell』」「#リリア謎」「ESCALOGUEシリーズ」など。
著書に「数学がゲームを動かす! ゲームデザインから人工知能まで」(日本評論社/三宅陽一郎氏との共著)、「ARGガイド2025」(エレメンツ工房/えぴくす名義での寄稿)。東京大学生産技術研究所リサーチフェロー。
《講演者からのメッセージ》
ゲーム機の外のメディアでインタラクティブな物語を紡ぐ「ARG(代替現実ゲーム)」は、ここ数年、非常に注目を集めています。
しかし、自由度が高く、いろいろなことができてしまう分、さまざまな落とし穴があるゲームジャンルでもあります。
みなさまがこの新しいゲームに飛び込んで、より良い体験を生み出すお手伝いができれば幸いです。


